papik_west coast


イタリアのベテラン・ユニット最新作は、
クールで心地よいウエストコースト・サウンドが満載。
Light Mellow Searchesで紹介してきたロー・ヴァン・ガープや
フィル・パーベリーニらをフィーチャー。
何処までも涼やかなトラックには、
アンブロージアのAOR聖典<Biggest Part Of Me>、
ボズ・スキャッグス<Miss Sun>、
エース/ポール・キャラック<How Long>のカヴァーも。


このパピックという名に、聞き覚えのある方も少なくないだろう。実は彼ら、イタリアのイルマ・レコーズを拠点に、09年のデビューからアルバム毎にスタイルやテーマを変えつつ、コンスタントなリリースを続けてきたユニークな音楽プロジェクト。日本でも12年作『MUSIC INSIDE』でデビューを飾り、ファッション系セレクト・ショップとブルーノート東京がコラボレートしたイベントで来日公演を行なっている。“ニュー・ジャズ” というキーワードの下、フィンランドのファイヴ・コーナーズ・クインテットやニコラ・コンテ、Jazzanovaらが注目された時期だ。

パピックの中心人物…というより、パピックそのものなのが、プロデューサー/メイン・ソングライター/キーボード奏者のネリオ・“パピック”・ポッジ。彼はマリオ・ビオンディのアルバムに参加したのち、09年にパピックとしてデビュー。アマンダ・レアやジェイソン・ドノヴァン、マット・ビアンコらに、作編曲やミックスで関わっている。しかもパピックの名を掲げた作品は、この約10年で何と25枚以上。サブスクリプションで作品リストを見ると、その数の多さにビックリする。加えて、そのリリース・スタイルもいろいろで、純然たるパピック作品だけでなく、シンガーやオーケストラとの共演作もあれば、彼らの全面サポートでニュー・カマーをプレゼンする作品、“Papik Smooth Experience”名義のスムーズ・ジャズ・アルバム、特定テーマのオムニバスで音楽を彼らが担当したケースも。その中には、英国人シンガー・ソングライター:サラ・ジェーン・モリスをフィーチャーしたり、お馴染み『ルパン三世』TVシリーズのイタリア版サウンドトラックもある。この『WEST COAST RENDEZ VOUS』も、正確にはパピック作品ではなく、パピック Presentsシー・ブリーズという特命ユニットのアルバムだ。

でもパピックで、このように米西海岸サウンド、日本でいうAORを取り上げたのは初めて。
「僕は米西海岸の音楽がメチャクチャ好きなんだ。でも作品にするには、適切なタイミングとインスピレーションを見つけなければならなかった」(ネリオ)

アンブロージア<Biggest Part Of Me>、ボズ・スキャッグス<Miss Sun>、エース<How Long>をカヴァーしたのは、「ただシンプルに、自分が大好きなウエストコースト・ミュージックを選んだ」結果。「絶好の機会だったから、コレを逃すわけにはいかないと思っていたよ。候補曲は他にもたくさんあった。長い長〜いリストがね」

10人近いシンガーを立てたこのプロジェクトだが、上記AORカヴァーのうち<How Long>を、オランダのツー・メン・ユニット:マーティン&ガープの片割れ、ロー・ヴァン・ガープが歌っている。早耳のAORフリークなら、マーティン&ガープ、ドーン・パトロール、そしてソロ・アルバムなどで、既に彼の歌声はご存知のはず。少しくぐもったスモーキー・ヴォイスが持ち味で、それがオリジナルを歌うポール・キャラックに通じる。ガープは本作で計3曲のリード・ヴォーカルを担当。

もう一人、要チェックなのが、2曲を歌うフィリッポ・パーベリーニだ。19年にフィル・パーベリーニ名義で日本デビューした大型新人で、クインシー・ジョーンズやデヴィッド・フォスター、プリンスなどから信頼を得る敏腕エンジニア:トミー・ヴィカリがプロデュースに当たり、ロッド・テンパートンやジェフリー・オズボーンらがサポート。超充実した『ALMOST MIDNIGHT』をリリースしている。

多作のパピックだけに、実は本作発表後、早くも『BOSSARAMA』というブラジリアンなラウンジ・アルバムをリリース。シカゴ<If You Leave me Now>、スーパートランプ<The Logical Song>、ギルバート・オサリヴァン<Alone Again>などを取り上げている。

サブスクで聴いたマニアから、日本盤のリクエストが結構舞いこんでいたが、いろいろ準備に手間取り、残念ながら夏には間に合わなかった。けれどコレを素通りする手はないヨ。