d55b043e.gif天才。
だけど壊れちゃいそうなほど繊細。
ヒトから聞いた噂はホントだった。

東北新幹線というのは、山下達郎バンドで活躍した鳴海寛(g.kyd.vo)と最近はスタジオ・シーンで活動する山川恵津子(kyd.vo)が、80年代初頭に組んでいたユニット。八神純子や谷山浩子などのバッキングで意気投合して結成され、82年にこの唯一のアルバムをリリースしている。ボクもこのユニットのことはずっと知らなかったが、ようやくアルバムをゲットして聴いてみたら、素晴らしいのなんの。先般の『Light Mellow 和モノ669』で大々的に取り上げたら、ヤフオクでは5ケタに到達するほどのプレミアがついてしまった。実は昨日23日、渋谷JZ BRATで、その東北新幹線のリユニオン・ライヴがあったのである。
 みんなに聴いて欲しくて紹介するのだから、中古盤の価格高騰は自分としても不本意。実際「アナタが本に載せちゃったから…」と批判する人もいる。が、隠れた名盤と出会うチャンスを提供するのはガイド本の役割のひとつだから、これは仕方がない。できればCD化したりコンピを組んだりしてオトシマエをつけたいとは思うが、レコード会社が腰を上げてくれるかどうか。今回のライヴが実現した経緯は知らないが、もし本のネタになったことがご本人たちの耳に入ってモチベーションのひとつになっているとしたら、とても嬉しいことだし、監修者冥利に尽きる。

さて肝心のライヴは、アルバム収録曲とボサノヴァ系のカヴァー曲を中心としたもの。バックは八神純子のサポートバンドからのピックアップである。で、とにかく驚いたのが、naruminこと鳴海さんのパフォーマンスと立ち振る舞い。彼と一緒に仕事をしたことがある人から、冒頭に書いた人物像を聞かされて「ふぅ〜ん」と思っていたが、ライヴのさわりを観ただけでそれが事実だと確信した。連れの一人は「若い頃のジョアン・ジルベルトって、きっとあんな感じだったんだろうね」と話していたが、言い得て妙。もちろん鳴海さんはステージでイネムリしたりはしない。でも気の向くままに感性を押し広げていくパフォーマンスは、まさに天才的だった。けれど振る舞いは子供のようにピュアーで少しだけ天然入っていて、音楽以外は「?」な感じ。シーンに登場した時から“天才”と謳われながら、限られたセッション・ワークにしか登場しないのは、きっと彼のナイーブ過ぎるキャラが原因なのだろう。リハーサル不足、しかも最近はあまり歌ってなかったのか、必ずしも完璧なステージではなかったケド、定期的に演ればきっとスゴくなる、そんな予感がヒシヒシと迫ってきた。一方の恵津子嬢は少し退いた感じで、鳴海さんのサポートに廻った雰囲気。でも透明感に満ちた歌声は相変らずで、2人の相性の良さを漂わせていた。

それにしてもnarumin、である。90年代にはfrascoという、ちょいボサ寄りのユニットで3枚のアルバムを出したが、その後は表立った活動はない。最近立ち上がったホームページを見ると、小さなジャズ・ライヴは行なっている様子。でも本来ならば、もっと注目されるべき人だと思う。今朝も起き抜けから仕事そっちのけでアルバムを聴き直しているが、彼のような類い稀なる才能を活かす場は、ビジネス優先の今のシーンにはもうないのだろうか?