d7fa7b17.jpg偉大なる死から2ヶ月半、遺作となったデュエット・アルバムが登場した。まったく別の原稿を書きながら、小さな音でパコソンで聴いていたのだけれど、ヴォリュームを上げて聴き入ってしまいますな。まだ明け方だというのに。

レイ・チャールズが偉大だ、というのは誰でも知っている。でもボクには思い入れがほとんどない。だって彼に現役感を持てないままで今まで来てしまったから、馴染みが薄いのだ。リスナー歴30余年の自分でさえ、彼が放ったリアルタイム・ヒットというと、クインシー・ジョーンズにフィーチャーされた<I'll Be Good To You>と日本のみの<エリー・マイ・ラヴ>程度。だから音楽の歴史を紐解くように、ベスト盤でお勉強しましたってノリなんだよね。グラミーとかイベントちっくな所には頻繁に出演していたけど、そういうのは名誉出演みたいなモノでしょう?

皮肉なことに、リリース準備中の死で、これ以上ないプロモーションになってしまったけれど、やはりここには惹き付けられる何かがある。ぶっちゃけ、声がカスレ気味だったり音程が不安定だったりして、シンガーとして万全の状態とは言い難い。だが説得力が違うのだ。並みのヴォーカリストが3分間朗々と歌うより、レイがピアノに乗せてひと声ふた声発するだけで多くのことが伝わる。やっぱり音楽って技術論じゃないんだよね。

デュエット相手は、ヴァン・モリソン、ジョニー・マティス、B.B.キング、ウィリー・ネルソン、ナタリー・コール、グラディス・ナイト等など、まさしく豪華絢爛。ノラ・ジョーンズ、ダイアナ・クラールといった今を代表する女性シンガーを揃えたあたりは、まるで両手に華。「ちょっとちょっとお客さん、お店の女の子を一人占めしちゃ困りますよ」なんて言いたくても、誰も文句を言えない状態、ってか!? 個人的にはジェームス・テイラー、マイケル・マクドナルド、ボニー・レイットとの曲が印象に残った。特にJ.T.の曲ではマイケル・ランドウのブルージーなギターが抜群。ボニーの曲も、歌以上に彼女のスライドが耳に残ります。

 で、一番感動したのは、残念ながら<エリー>ではなく、エルトン・ジョンの<悲しみのバラード(Sorry Seems To Be The Hardest Word)>。原題は“ゴメンナサイは一番キツイ言葉”って意味だが、英語の"sorry"には「残念」という意味があり、日本の「お悔やみ」にあたる。しかも解説によれば、コレが本作の最後のレコーディング曲とか。まるでレイは自分の死期を悟っていたかのようだ。

レイ・チャールズ、享年73歳。2003年6月10日に没す。どうぞ安らかに…。