03d3a5c7.jpg今、アチコチに原稿を書きながら、11月末にリリース予定になっているLight Mellow和モノ・シリーズ第2弾の収録曲やイメージについて、詰めの段階に入っている。その中に、ズバリ"PURE"というタイトルが候補になっているのがあった。だからこのボニー・ジェイムスの新譜を手にして、結構ビックリ。結局そちらは他のタイトルに落ち着いたが、イメージはやっぱり繋がってる。うぅ〜ん、良いのか悪いのか…!?
そもそも自分は、最近のスムース・ジャズには少々頷けないモノがあって。もちろんサウンド自体はキライじゃない。っていうか、結構積極的に好きカモ。多分AORもフュージョンもブラコンも聴くって人は、みんなそうじゃないかと思うが。
ただ問題なのは、あまりに無個性なアーティストが多過ぎるってコト。だから例えばラリー・カールトンのスムース・ジャズ作などは、プロデュースがお決まりのポール・ブラウンであっても、彼のギターが鳴り出せば「オッ、カールトンだ」とすぐに気づく。それはサンボーンやグローヴァー、ケニーGなどでも同じ。でもスムース・ジャズの時代になってから台頭してきたアーティストは、個性よりスタイルありき。だから、誰が誰やら聴き分けられない。もちろん「それはアンタの聴き込み不足」というご指摘はあるだろう。でも70'sのインストゥルメンタリストって、楽器の音色自体にオリジナリティーがあったよね。でも最近のスムース・ジャズにはそれがない。

このボニー・ジェームスは、ソロを出し始めた時からずっとチェックしているサックス奏者。元々ボビー・コールドウェルのバックで吹いていて注目され、92年にデビュー。ここ数年でメキメキ人気をつけ、近年の作品には風格が出てきた。この新作『PURE』でも、BILALという新進気鋭のシンガーを迎えたり、ベテランのジョー・サンプルと共演したりと、まさに脂が乗り切った状態。かなりハイ・レヴェルの仕上がりである。
ただそれでも個性という面では、今ひとつ納得ができない。それは決してボニーだけでなく、リック・ブラウン(tr)やブライアン・カルバートソン(kyd)など、他のスムース・ジャズ系人気アーティストでも同じ。その人ならではの味わいが薄く、「スムース・ジャズなら何でも良い」になってしまう。極論すれば、彼らは心地良い音楽を再生産しているだけで、魂をぶつけ合うほどクリエイトしてはいない。それなりに苦労するものの、比較的軽く作れてしまうから、自分だけの音や手法は生まれづらいのだ。

音楽としてのスムース・ジャズは悪くない。しかしこのままでは70〜80点レベルの作品ばかりで、真の名盤は生まれない。でも、そうしたアルバムのリリースさえ見送られてしまう日本の状況は、もっと良くないかも。