ece2310b.jpgこのロゴに、ピ〜ンときたならポチッとな。

ズバリ、アン&ナンシー・ウィルソン率いるハートの、11年ぶりのスタジオ・アルバムである。
そう聞いただけでウルルッと来るのは、<What About Love><Never><These Dreams><Alone>あたりに親しんだ30代の産業ロック・ファンだろう。でも40代のオレは、それだけでウルルッとは来ない。せいぜい「ほぅ〜」と興味を示すだけだ。けれどこのジャケを見て、ピクンと反応する人はいるだろう。その原因は、火花の向こうに見える顔ではなく。そう、その下のピンクいロゴ・マークなのである。これはあの『DREAMBOAT ANNIE』や『MAGAZINE』など、マッシュルーム・レーベル時代の彼女たちを飾った懐かしいロゴなのだ。
確かに80年代後半にヒットを連発していた頃のハートはカッコ良かった。イイ曲も多かった。ただ外部ライターの持って来る曲は、ヒット・ポテンシャルには秀でていても、ハートが歌う必然性には乏しかった。最初にズラズラと書いた曲たちだって、ある程度人気のある同系グループなら、似たような成績を収めただろう。もっともこれは、他の産業グループにも当てはまる。実はこの時期、自前の曲だけでヒット・チャートに参戦していたアリーナ・ロック系グループは意外と少ない。

だからコレで育った30代ロック・ファンと違って、40代のファンは初期ハートに反応する。自分も入り口は<バラクーダ>だった。しかしアルバムとしては、圧倒的にマッシュルーム時代の2枚。曲で言えば<Crazy on You>とか<Magic Man>とか<Heartless>とか。もう、タマリましぇん! この頃の曲は、何故か懐かしくも新鮮に聴こえる。だから11年ぶりの新録盤に昔のロゴを見つけ、もしかして原点回帰したのか?と期待したわけだ。

実際に予兆はあった。ハートの活動休止中、ウィルソン姉妹はラヴ・モンガーズというアコースティック・ユニットで活動した。初期の彼女たちは、ツェッペリンの影響をマトモに受けたヘヴィ・ロックとフォーキーなアコースティック・サウンドが特徴だったから、ラヴ・モンガーズはそうしたアイデンティティの確認じゃないかと思っていた。そしてインディから自由な環境でリリースした新作に昔のロゴがあれば、やっぱりねぇ〜。

…というわけで、初期ハート・ファンには涙モノの新作です。ハッキリ言って、ツェッペリンしてます。アコギの曲もフォーキーというより、ツェッペリンの3枚目とか、実質的再結成といわれたペイジ=プラントみたい。ビートルズ風の曲もある。ただポップな産業系ナンバーがほとんどないので、中期ファンには野暮ったく聴こえるかも。でもホントのハートらしさを求めるのなら、断然コレ。オバサンは剛、じゃなくて、強し!です。それしてもナンシーはキレイだ。50歳を越えたとは、とても思えん!

あとちょっと気になったのは、ワンダーミンツや、再録『SMiLE』で話題沸騰中のブライアン・ウィルソンのバックを勤めるダリアン・サハナジャが正式メンバーで参加してる点。なのに解説では何のコメントもない。制作途中での加入らしくて本領発揮には程遠いが、もしかしたら次はキー・マンになってるかも。さもなくば肌に合わず抜けてるか。元アリス・イン・チェインのベースの加入やパール・ジャムのメンバーのゲスト参加はシッカリ触れているだけに、ひと言もないのは少々残念。もしかして知らなかった? もっとも、自分が書いてたら、最近のシアトルのグランジ系人脈なんて全然分からないケド(苦笑)