693da5b2.jpg角松“Fankacoustic Tour”の初日、昨日のさいたま公演へ行ってきた。このところ、彼のツアーはいつも埼玉スタートなので、地元民のボクはそのツアーの駆け出しをチェックしつつ、東京などワン・ツアーを必ず2〜3回観る。だいたいこれまでのツアーだと、リラックスした中にも初日特有のピリピリした雰囲気が感じられるものだが、今回はホーントにマイペース。まるでツアー終盤のようなユルさだ。終演後の楽屋でも「まったりしてただろ?」と当人。だがそれが心地良かったのだ。
詳しいセット・リストはネタバレになるので書かないが、当然メインは『Fankacoustic』の楽曲。でも意外だったのは、凍結前の古い曲が多かったこと。実は『SUMMER 4 RHYTHM』ツアーの時に“せっかく企画性を高くしたのだから、もっと昔の曲を演ればいいのに…”と思っていたが、図らずもそれがこのツアーで実現した感じ。
日替わりメニューもあるので必ずとは言えないが、この日は3作目『ON THE CITY SHORE』からの楽曲が多かった。当然そのどれもがアコースティック仕様にリ・アレンジされているのだけれど、この日、個人的にオオッとノケぞるようなカッコ良いアレンジになってなっていたのは、みんなこのアルバムからの曲だった。

ここからはボク個人の考えなのだけど、『INCANATIO』にせよ『SUMMER 4 RHYTHM』にせよ、あるいは『Fankacoustic』にせよ、その原点は“存在の証明”のあとのエキストラ・ツアーにあったように思う。あれはセット・リストのほとんどが新曲で固められた、画期的かつ実験的なライヴハウス・ツアーだった。今だから言えるけれど、渾身のアルバムだった『存在の証明』のセールスが伸び悩み、いろいろ考えることの多い時期でもあった。おそらく角松の脳裏には、あのライヴの時点で、これから自分が進むべき道について、朧げながら幾つかのアイディアがあったと思う。そのひとつが内省と歴史探訪と民族音楽を結びつける道であり、もうひとつがファン・サービス的な80's回帰。そしてそれと隣り合わせのファンク路線だったと思う。
このファンク指向に、昨今のアコースティック・グルーヴ的なテイストを掛けたのが『Fankacoustic』。言い換えれば、これは“存在の証明”のリベンジなのだ。だからアガルタ以来のラテンなノリが窺えたのは当然。わざわざ全国津々浦々を廻るツアーを組んだのも、「すべてを出し切った作品」と力説するのも、それが理由なのではないか? 昨日のライヴを観て、その想いは余計に強くなった。

あと、これからライヴを観る方に注目して欲しいのは、ギターの梶原順。角松のツアーには久々の復帰になるけれど、今回のセットは彼のギターが大フィーチャーされている。しかもJ&BやSourceなどでは聴けないセミ・アコのジャジーなプレイなどもありで、超一級のテクニシャンぶりをまざまざと見せつける。いつものブッチャー氏がチョッと引いたポジションから味で聴かせるタイプだけに、ちょっと驚く人がいるかも。ドラムレス編成というコトで、パーカッション田中倫明さんの頑張りも大変である。
角松自身、MCで話していたが、このツアーの見どころはフル・メンバーが揃うソリッド・サイドではなく、このアコースティック・サイドでしょうな。

まずは順調に滑り出した今ツアー。よほど縁があるらしく、今日の市川は台風に見舞われそうだが、内容はこれからドンドン熟れていくことでしょう。ボクもまた関東周辺で、もう1〜2度チェック入れたいと思っています。

角松ご一行様、いってらっしゃい!