cdbbae32.jpgアッ、ちょっとそこのアナタ! 今、ジャケットの画像見て、「ケッ★今日はビリー・ジョエルかいッ」って思ったでしょ。ハッキリ言ってバカにしてますね、彼のコト。えーえー、そーですか。でもイイんですよ、ボクだって昔はそうでしたから。けどホントのところ、どーなんですか? ちゃんと彼のアルバム聴いてますか? <Just The Way You Are>とか<Honesty>だけで判断しちゃってませんか? 
…というワケで、カナザワは今、ビリー攻めに遭っている。そう、彼のアルバムが紙ジャケでドドッと出直したので、某誌の特集を担当してるのだ。オリジナル12枚、ライヴ2枚、そして新曲入りベスト3枚で、全17タイトル。前半分はもうショップに並んでるけど、後半は来月リリースされるのだ。正直なところ、CD時代の作品とかベストまで出す意味あるのー?なんて思ったが、欧米ではしっかりアナログが出てたらしい。でも、デビュー盤が金ピカの初回盤仕様だったり、帯もオリジナルで復活したりで、なかなか丁寧な仕事っぷり。『PIANO MAN』の邦題が『ジョエルの物語』なんて、笑っちゃうケドねぇー。

けれどこうして改めて彼のアルバムを順に聴き直すと、いろいろ再発見がある。特に売れる前、『THE STRANGER』以前の作品ね。その最たるモノが、この『ニューヨーク物語』。<さよならハリウッド>とか、カヴァーが多い<New York State of Mind>とかが入っているアルバムとして知られてるけど、これホント、隠れ名盤ですヨ。

そもそも、『THE STRANGER』や『52nd.STREET』が売れ過ぎちゃったわけ。あまりにポピュラー化しちゃった。彼はAORの範疇で語られるコトが多いけれど、こうなると通ぶったAORファンは絶対逃げる。80年代初めのリアルタイム派なあんて、まさにそう。「エー、ビリー・ジョエルぅ? オマエ、そんなダサイの聴いてんのー?」なんてさ。例えば、信号待ちで隣の車線に並んだヤツのカー・オーディオからビリーが聴こえたら、恥ずかしーと思っちゃう。まぁ、助手席に女の子でも乗ってれば、しゃーないなーってコトになるんだけど。

かく言う自分もそのクチ。レコードは聴いてたし、好きなアルバムもあったけど、AORとしては扱ってなかった。だから時々、最近の若いAORファンに「ビリー・ジョエルってどーなんすか」と尋ねられる。彼らにはそういう偏見がないから、音だけ聴いて素直に反応できるのだ。確かに“小粋さ”や“洒落っ気”みたいなモノはないけれど、ポップスとAORの狭間を行ってる感じは前からあった。最近はAORも拡大解釈されるから、そうした意味では充分AORだろう。

ただ、80年代後半以降のアルバムは、個人的にはどうも今イチ。作品的には凄いコトをやってるし、ヒットもしたけど、「これってビリーがやるべき音なのかな?」って疑問がいつも付いて回ってた。終いにゃクラシックに転身でしょ? 本人は、それが音楽家としての成長だって言ってるけど、どーなのかね? ガキの頃からベートーベンやモーツァルトが好きだった、というのは結構だけど、同じように憧れてたビートルズでいえば、ポールなんかはリヴァプール・オラトリオとのクラシック作品とポップ・アルバムを両立させてるワケだ。ビリーも確かにエルトン・ジョンとジョイント・ライヴをやったりしてファン・サーヴィスをしてるけど、クラシック作曲家のビリーなんておそらく誰も求めてない。そこをちょいっと勘違いしてないか?

こうして彼が残した数々の名曲を聴くと、余計にそう思う。最近、32歳年下のカミサンを貰った(3度目の結婚)とかで浮かれてる写真を見たけど、ファンは何よりポップスの現場復帰を求めてるのだ。

…にしても、32歳年下かぁ…。羨ましい…。でもオレが32歳年下の女を相手にしたら、それこそ犯罪になっちゃうよー(苦笑)