76b4a29f.jpg邦題:イヴニング・スキャンダル。
もうAORの定番中の定番ですネ。それが12月末、カナザワ選曲・解説の『THE BEST』と一緒に紙ジャケ×リマスター仕様でリイシュー。当初の予定では1〜4枚目をまとめて紙ジャケ化するはずだったが、倒産したTKレーベル原盤のものとポリドール移籍後の3〜4枚目では楽曲管理の状況が異なり、結局1〜2枚目だけが先行リリースとなった。
特にファースト『イヴニング・スキャンダル』は、オリジナルTK盤(当時の国内盤はCBSソニーから)のみに入っていた<Can't Say Goodbye>のギター・ソロ・ヴァージョンをボーナス・トラックで収録。ファンには嬉しい再発となった。
そしてもうひとつ、ボビーの日本語サイトを主宰している“おっさん”こと威脇忠義氏が、念願叶って初めてボビー作品の解説を書いている。ボクも一応ベスト盤だけでなく、セカンド『CAT IN THE HAT(ロマンティック・キャット)』のライナーも書かせてもらったが、今回、威脇のおっさんが解説を書くことになったのが自分のコトのように嬉しい。

そのおっさんがライナーの締めくくりで、諦めずに夢を追い続ければきっと叶う、という旨を記している。彼にとってはボビーのライナーを書くコトが「夢」だったワケだ。

今こうして音楽雑文を書いたり、ラジオ番組やコンピCDの選曲を生業としている自分も、かつては音楽ライターになるのが夢だった。そして20年前に一度音楽関係の職に就いたが、あまりの過酷さと必ずしも自分の望んだ職種ではなかったために挫折。その後の約15年は、至ってフツーのサラリーマンを続けてきた。その間、音楽を仕事にするコトは、もはや夢ではなかったかも知れない。それこそ宝クジが当たったらAORバーでもやるか、といった実現の可能性が極めて低い“夢のまた夢”というレベルだったと思う。
しかし情報交換のために参加したAORサークルで会報編集を任され、そこで書いた文章がその筋の人達に認められて、プロへの道が開けたワケだ。ほとんど諦めていた夢が、向こうの方から近づいてきた。そうしたら誰だって手を伸ばしてみたくなるものだろう。
当初は仲間内にも「プロになるためにサークルを利用した!」なんてボクを攻撃する輩がいた。が、もしボクが本気でそう思ってたら、もっと近くて確実な道を選ぶだろう。何も好んでこんな頭の悪いやり方はしない。詰まるところ、ヤッカミだったわけだ。案の定、そう言った奴はだんだん皆の輪から遠のいて行った。
夢を追い続けてきたワケではない。しかし無欲で夢の近くに居続けたからこそ、いつの間にか実現のチャンスに恵まれた、そう思う。

そういえば、音楽ライターへの道を選ぶ時、ある編集者に言われた言葉がある。
「お前はずっと音楽ファンとして音楽を聴き、その立場で文章を書いてきた。だからドップリ業界に染まってしまったヤツには書けないコトが書ける。そのシロウトっぽさをなくすな」
確かに業界入りすれば、つきあいで文章を依頼されるコトは多少ある。しかし自分の書くことに責任を持てなくなるくらいなら、ボクはその依頼を断るだろう。そうしなければ、書き手としての信用をなくすだけだから。
何より読み手としての自分がそうだった。音楽誌のレビューをレコ購入の参考にしながらも、いつもライターの品定めをしていた。例えば、●●さんは自分と感性が近くて信用できるとか、▲▲さんは何でも褒めるからアテにできないとか。
それが今度は、自分が皆さんから品定めされる番になった。だから常にそういう目を意識して、本当に音楽ファンの役に立つ情報を流していくのが自分の使命だと思っている。このサイトもそういう情報ツールのひとつとして立ち上げたのだ。そのためにボクは積極的にBBSに参加するし、blogの書き込みも音楽ネタを基本にしている。今日ボクが何処へ行って、誰と会って、何喰って、夜はこんな原稿書きました、なんて内容の日記で、音楽ファンの皆さんは何か得られますか? そんな日記に興味を持つのは、多分同業者かライター志望の人だけでしょう?

ちょうど年始めというタイミングで、改めておっさんのライナーを読み直し、“初心忘れずべからず”を痛切に感じた。夢は無理に追わなくたっていい。ただ心に持ち続けるだけで、実現のチャンスが巡ってくることだってあるのだ。でも夢をなくしたヤツは、ただ無駄に時を過ごすことになりかねない。たとえ平凡であっても、前向きに進むことができるかどうかで、自ずと生きる意味が違ってくるのではないか?