5a953f47.jpg某誌レビューのため、待望の冨田ラボのセカンド『SHIPCLAUNCHING』をひとあし早く試聴。このところシングル3枚を小出しにされてたモンだから、妙に期待感が募っちゃって、久し振りに「首を長くして待つ」感覚を味わった。しかもSOULHEADをフィーチャーした<Like A Queen>、大滝詠一声の田中拡邦(マーマレイド・ラグ)が歌った<アタタカイ雨>、あのCHEMISTRYとのコラボレイト<ずっと読みかけの夏>と、どのシングルも良かったからね。そのうえ絶妙の関係を築いてきたキリンジの堀込兄弟が、このところ冨田恵一から離れてそれぞれソロ活動してるでしょ。特にスティーリー・ダン色全開の兄・高樹のソロ(詳細はココ)を聴いてから、余計に冨田ラボの新作が待ち通しくなっていた。

タイトルの『SHIPCLAUCHING』とは船の進水のこと。ファースト『SHIPBUILDING』が造船だから、いよいよ船出というわけ。もちろんシングル3部作はすべて収録。さらに高橋幸宏&大貫妙子がデュエットしたり、新人YOSHIKAを大胆起用したり。作詞にも吉田美奈子や鈴木慶一、高野寛、キリンジ兄とクセ者たちが集っている。それこそ好き勝手やりたい放題の思うがまま。でも呼ばれた方も冨田の手際を見ながら、自分がどう料理されていくかを楽しんでいるのが伝わってくる。とにかくセンスの良さとサウンドメイクの巧みさは半端じゃなく、Steely Danに通じる捻れたポップ感覚を万人向けに聴かせてしまうのだ。そうかと思うと、<濃いは傘の中で愛に>なんて曲はモロにプログレ風。特にベースは完全にYesのChris Squireを意識している。そこでSteely DanとYesを同レベルで昇華してしまうもう一人の男を思い出した。他ならぬ角松敏生である。

そう、実はこの2人、かなり指向性が似ているとカナザワは思っている。世代的に近いから、聴いて育った音楽も一緒だし、コダワリのサウンド・クリエイターという面も一緒。違うのは、角松が自作の歌を歌うシンガー・ソングライター/アーティストであるのに対し、冨田恵一はあくまで裏方のプロデュース業がメインという点だろう。だから角松は、ある時期から他人の意見やハヤリの音に耳を貸さず、自分の音楽観だけで勝負するようになった。反対に冨田はプロデューサーだから、周囲に充分気を配った上で、それを昇華して音を完成させていく。その音は自分のモノというより、第一義的にはクライアントたるアーティストの音であるわけ。そこに冨田自身の精神性が反映されることは、まずあり得ない。
こうして音楽的には近いと思えても、実際の仕事っぷりと評価には大きな差がある2人。果たしてどちらがイイのかは早計な結論など出せないけど、しかし冨田が今のJ−POPシーンきっての売れっ子プロデューサーであることは紛れもない事実だ。しかも某T.K.氏(角松じゃないよ)などとは違って、極めて音楽的。でも40代の音楽ファンってわりかし閉鎖的な人が多くて、きっと冨田ラボなんてバカにして聴かないんだよね。AORだって、変にリアルタイム物にこだわっちゃうとか。他の世代よりも、何故か度量の狭い批評家もどきが多いんだ。ま、自分も時々そういう反応をしたりするケド(苦笑)

ちなみに冨田ラボのオフィシャルHPには最近スタートしたblogがあって、彼自身がこまめに書き込んでいる。それを読むと、彼の音楽の好みや聴いてきた音楽の足取りが分かって、なかなか興味深い。ところがその1月30日のblogに、突然カナザワ著のガイド本『BLACK CONTEMPORARY MUSIC GUIDE』が登場してビックリ。なんとラジカセの高さを調整する台座代わりの一冊に使われてた。そして「著者のみなさま、すいません」とお詫びが。でも次のひと言に感涙。「ラジカセが耳の高さに来るように無作為で集めた本ですが、うまい具合に指向を説明してくれています」
 もしあの本が少しでも冨田サウンドに役立ったなら、たとえ下敷きにされても本望ですよ!

書き忘れましたが、今月出る『SHIPCLAUNCHING』はもちろんサイコー。早くも今年のNo.1 J−ポップ・アルバム出現の予感アリです。こりゃあ現在レコーディング中の角松の新譜と一騎打ちかな?