1a63cd53.jpgRandy Vanwarmerが白血病で急逝して早2年。日本風にいえば3回忌にあたる今年1月に、遺作『SINGS STEPHEN FOSTER』が国内リリースされた。AORにFosterといえば、かのDavidさんに決まってるけど、このStephen Fosterはクラシック界のFoster。<おおスザンナ>とか<草競馬>とか、あるいは♪遥かなるスワニー河〜♪という歌い出しも懐かしい<故郷の人々>とか。ホラ、きっと小学校の音楽室にも肖像画があったでしょ? 多分、肩肘ついたポーズのやつ。

でも何故にAORシンガーがクラシックを? いやいや、それは先入観というものヨ。クラシックとは言ってても、Foterはモーツァルトとかヴェートーヴェンとかバッハのような格調高い中世ヨーロッパの作曲家ではない。曲を聴けば分かるように、19世紀アメリカの庶民派作曲家であり、米国初のソングライター、アメリカン・フォークの父、などと呼ばれたりする。だからジャンルとしてのクラシックではなく、ポップ・ミュージックの古典。最古のアメリカン・オールディーズなのだ。

でもかくいうカナザワも、実は新作がStephen Fosterのカヴァー集だと聞いてからは、ずっと腰が引け気味で…(苦笑)。CDを手にしても、忙しさにカマけてしばらく放置プレイの憂き目に遭わせていた。ところが原稿書きのBGMにプレイヤーに乗せてみたら、「エッ、うそ!?」と軽い驚き。それこそ生ギターとバンジョーかなんかでカントリー・チックにジャカジャカ演ってるのかと思いきや、打ち込みを使ってクールかつスタイリッシュなサウンドメイク。サビあたりまで来て、ようやく「あぁ、<草競馬>か…」と気づく始末で、全然イメージが違う。良い意味で完全に裏切られたワケだ。でも振り返ってみれば、Fosterの曲なら今までにもJames Taylorが<おぉスザンナ>を歌ってたり、ジェニファー・ウォーンズや矢野顕子が取り上げた<すべては終りぬ>なんてのがあったのだけれど。

とにかく音作りが斬新というか、キチンとした今の音。でもそれを売りにするワケじゃなく、あくまでオーガニックなテイストが貫かれている。それでもチープさがないのは、さすがベテランの経験が成せるワザか。一番の魅力は、何と言ってもRandyのナイーヴな歌声。一人多重で心をシビレさせる曲もある。こんなに彼の声をフレッシュに感じたのは、きっと最近紙ジャケ/リマスターで出直した『アメリカン・モーニング(WARMER)』以来かも知れない。生の歌と必要最低限の打ち込みによるサウンド、その極め方が秀逸で、カヴァー作品としての完成度も高い。

こっちの勝手な思い込みで素通りしそうになったが、これはチョッとした隠れ和みアルバムの快作。ちなみにアルバムが完成を見たのは、Randyが白血病だと分かる数日前だとか。そして運命の1月12日はRandyの命日であるだけでなく、Stephen Fosterの亡くなった日でもあるという…