452386d3.jpg普段はこうしたクラシカル・クロスオーヴァー系とは縁遠いカナザワだが、今回は珍しく真剣に聴く気に。というのは、角松敏生を筆頭に、DEENや鳥山雄司、加古隆、S.E.N.S.等など、豪華な顔ぶれが参加していたから。しかもビックリ、この世界的に名高いオーボエ奏者は、何と来年3月で演奏活動から足を洗うそうなんである…。

演奏活動を辞めるのは、何か特別な理由があるわけじゃなく、単に「節目が来ている」と感じたからだという。本当だろうか? 彼は教壇に立っているから、例えば演奏活動に疲れたとか、何か理由があるような気がする。ただ伝わってくる彼の表情はあまり暗くはなく、むしろサッパリしている印象。そして彼の集大成的アルバムとして、これまでに共演したクラシック以外のアーティストたちとのコラボレイトを感謝を込めてもう一度、というのがこのアルバムである。

「僕がずっとミュージシャンでしか生きられないのと同じように、宮本さんもずっとミュージシャンでしか生きられないのではないだろうか。僕は勝手にそう思うのである。(中略)一度音楽辞めた!と思ったら結局辞められなかった角松敏生より…」
そう、角松は単なる共演者ではなく、同じように音楽活動を辞めようとした先輩でもあるわけだ。

今だから言えることだけど、角松が髪をバッサリ切った『ALL IS VANITY TOUR』の最中、口にしてたのは、「アーティスト活動の凍結」ではなく「引退」だった。だが少し気持ちが落ち着いて冷静になると、やはり不安になったのだろう。果たして音楽を捨てた自分に何が残るのか…と。それでああいう形に収まったのだと思う。あの時ボクは「黙ってしばらく休んで、戻りたくなったら戻ってくればイイんじゃないか。引退とか休養なんて宣言する必要はない」と説得した覚えがある。でも当人にしてみれば「引退」とか「活動停止」という、ハッキリした形が欲しかったのだ。そう、歌にも歌われている「君」へのメッセージとして。

あの時、角松をよく知る友人は、「アイツが音楽を捨てられるワケがない。ただ、プロのアーティストじゃなくなるってコトだろ。地位を捨てて転職するようなものだから、それはそれでいいんだよ」と言っていた。なるほどな、と思った。ボクはいつしか、角松のポジションを守ることに考えが傾いていたようである。

けれど宮本さんの場合は、そう切羽詰まったモノでもなさそう。人生の分岐点に差し掛かった時、たまたま音楽とは別の道を選ぶことになっただけだろう。演奏活動からは離れるかもしれないが、きっと趣味で音楽を聴いたり、たまにはチョッと吹いてみたりってコトはあるはずである。人の生き様に正解なんてないのだから、それでイイのだ。

そしてこのラスト・コンセプトアルバム『THANKS!』に収められた宮本さんと角松の最後のコラボレイトは、<Your Dream>というインスト・バラード。まさに角松メロディの一曲だ。ただ、夢をなくして音楽を捨てようとした角松と、別の夢を追うために音楽から離れる宮本さんとでは、心の重みが全然違うのではないかなぁ…