459bdcb2.jpg昨年暮れ、STAR digioの年末特番収録で一緒になったライター仲間H君からのリコメンド。曰く「これはブラコン系が分かる人じゃないと、ホントの良さが分からないかもしれない。だから金澤さんには絶対聴いて欲しいなぁ、必ず好きになるはずだから」 そこまで言われりゃ、無視するわけにはいかない。で、年明けてから買いました。案の定、ズッポシはまりました。それから定期的に聴いてます。

このKEMは『ALBUM II』とある通り、これが2作目となるシンガー・ソングライター/キーボード奏者。タイプ的には最近ハヤリのヒップホップ・ソウル系ではなく、ネオ・ソウルと80年代のクワイエット・ストームを掛け合わせた感じ。ま、今ならスムース・ジャズってことになるけれど、それほど類型的ではないしムードにも流されない。ヴォーカルは中世的で、ファルセットはほとんど女声。だけど中低音はわりと男っぽいという、不思議な魅力を持っている。地声とファルセットを使い分けると、まるで一人デュエット状態だ。
それにAl Jarreauの影響大。ヴォイス・パーカッション風に始まる<Into You>なんて、てっきり彼がゲスト参加してるんだと思って、クレジットを探したくらいである(Thanks欄にはあるけれど)。

そしてまた、曲が良い、アレンジが良い。特に頭から4曲が絶品! まったりだけどディープならず、コクはあるけどシツコクない(ラーメンみたい…)。そして音数の少ない中に、エレピが気持ちよく揺らめく。実は先週書いたアドリブ誌の【エレピ特集】に入れちゃおっか、と思ったくらい、見事にエレピってるのだ。5曲目の<Without You>なんて、エレピの弾き語りにサックスが絡みつくだけっスよ(ドラムレス)。そういえば、ニュー・ソウルというか、Donny Hathawayっぽい雰囲気もあるな。だからJarreauといっても、Jay Graydonと組む前のメロウな頃のテイスト。このあたりはやっぱり今ドキのアーティストだ。Stevie Wonderがハーモニカ吹いてる曲もある。グルーヴが効いたのなら、ラストの<I Get Lifted>かな。

そもそも最近のロイク系は、次々と新人が出てきてアルバム1〜2枚で消えて行くから、カナザワはもうほとんどついていけなくなっている。でも一方で、ピンと来るのがいないという現実も。近々じゃRaul MiddonとCraig Davidが良かったが、Craig Davidは前に2ステップやってた頃は、全然お呼びじゃなかったし。かのJohn Legendにしても、カナザワ的にはまったくピーンと来なかった。それこそ試聴機で聴いただけで「オレ、好きくないかも…」と思っちゃたんである。それでも人気がウナギのぼりだったもんだから、レコ屋にいくたび数回は挑戦した。でも、とうとう買う気になれなかった。そのクセ、Sergio MendezのアルバムでJohn Legendが歌ってるのは、素直にイイと思える。要は彼のアルバムのドープな作りが好きじゃないみたい。初めて聴いたときは、ファンクとレゲエの合体か!?なーんて(苦笑)

感覚が鈍ったのか? もう歳かな? 実はそんな思いをチョッとだけ抱いたりした。だからKEMみたいな新人が出てくると、すごい嬉しい。安心する。国内盤が出ないので、H君が「こういうのをチャンと評価しないシーンはマズイっすよ」と言ってたが、その意見には諸手を上げて賛成。これを喜ぶ人たちは確実に存在するはずだから。

そうそう、忘れないうちにKEMのファーストも聴かなくちゃネ!