a917d400.jpg御存知TOTOの3代目シンガー、Joseph Williams。父親が映画音楽の巨匠John Williamsなだけに、恵まれた音楽環境に育ち、音楽性の広さ、歌の実力、作・編曲の才能、どれをとってもTOTOに打ってつけの人材だった。L.A.育ちで、他のメンバーとも古くからの知り合い同士だったというし。TOTOというとスタジオ・ミュージシャンの集まりと見られるけれど、実際はハイスクール時代からの仲間たちが組んだ悪ガキ・バンドがベースなんだよね。

だからこそ若い頃からの遊び仲間だったJosephは、TOTOにフィットしていたワケだ。ところがアルバム2枚であっけなく脱退。彼の兄貴分で、バンドの取りまとめ役だった故Jeff Porcaroに引導を渡されたらしいけど、その原因がよく分かっていない。喉をつぶして歌えなくなった、というのが一般的な話だが、どうもそれだけじゃないみたい…。ま、今はヨロシクやってるようで、TOTOの最新作『FALLING IN BETWEEN』にもゲスト参加。来日前にはアメリカのTV番組でもジョイントした、なんて話も聞いている。

こうしたTOTOの動きに連動してか、最近Joseph自身の動きも激しい。彼がヨーロッパで看板シンガーとして参加しているメロディック・ロック・プロジェクトVertigoも、6月にセカンドが出る。それを作ってるという話は以前から耳にしてたので、「やっぱり来たかぁ〜」なのだが、その少し前の5月末に、何と久々のソロ・アルバムが出ることになった。ココに掲げた『3』が97年4月のリリースだったから、丸9年ぶり。ま、その間にデモ集『EARLY YEARS』が出たり、West Coarst AllstarsやVertigoファーストなどがあったわけが、やはりソロ作となると、どうしても思い入れが違う。

そのタイトルは『TWO OF US』。でもこのソロ・アルバム、実はピアノだけをバックにしたバラード・カヴァー集。いわゆる企画モノなのだ。たしか3年くらい前にそんなアルバムが出る!と予告されたことがあったが、いつの間にか中止されてしまっていた。でもそのとき音は完成してたようで、それが今回のリリースの下になってるみたい。(C)も2004年とある。カヴァー集ということでJosephの作曲の才が封印されてしまったのは残念だが、彼のジェントルなヴォーカルを堪能するにはちょうど良い内容。TOTOファンにはハイトーンでラウドに歌うJosephがスキッ!という向きも居られようが、その思いはVertigoにブツけていただくとして、ここでは彼のソフト・サイドを楽しみたい。

収録曲は、I Don't Want To Miss A Thing(Aerosmith)、Unchained Melody(Righteous Bros)、Because You Love Me(Celine Dion)、Now And Forever(Richard Marx)、Your Song(Elton John)、I Do It For You(Bryan Adams)、Have I Told You Lately(Rod Stewart/オリジナル:Van Morrison)、Can't Fight This Feeling(REO Speedwagon)、We're All Alone(Boz Scaggs)、Can't Help Falling In Love(Elvis Presley)、Save The Best For Last(Vannessa Williams)という全11曲。まぁ、かなりベタな選曲ではあるが、そこがさすが日本のマーケットを熟知しているJoey Carboneのプロデュース。いわゆる普通のポップス・ファンにも聴いてもらえるような、ピュアーなヴォーカル・アルバムに仕上がっている。ちなみにライナーは、わたくしカナザワが書くことに。現在、鋭意執筆中であります。

というわけで、CD-Rで届いた新譜だけでなく、Josephのソロ作品を順次プレイヤーに乗せているんだけれど…。でもやっぱり思い入れが高いのは、TOTO加入前のファースト(82年)かな。脱退後の96年に出た『I AM ALIVE』は、全体的にコンパクトにまとめたポップ・ロック作品といった印象。アルバムとしちゃあ悪くないけど、もっとTOTOっぽい作風を期待してただけに、仲間共々多いにコケた記憶がある。その反省に立ったのが、この『3』。特にノッケの2曲はソリッドなロック・ナンバーで、それこそTOTO顔負け!  けれど聴き進めて行くと、Cheap Trickあたりがやりそうなパワー・ポップ・チューンも飛び出して、彼の指向性の広さを思い知る。ラストなんてBeatlesの名曲<In My Life>だからね(日本でのライヴ録音)。

そうして考えると、やっぱりJosephはメロディック・ロックだけの人じゃない。VertigoはVertigo、新譜は新譜で良いけれど、いずれはそれを掛け併せたような本格的ソロ・アルバムを期待したい。この『3』もJosephの多面性を並べてるだけで、まだ自分を確立できていない気がする。イヤ、それがJosephだ!っていやぁ、話はオシマイなんだがね(苦笑) ちなみにチョッと小耳に挟んだ噂では、Josephが近い将来TOTOに復帰して、Bobby Kimballとのツイン・ヴォーカル体制になる可能性があるとか!? エ〜〜〜〜ッ、ホントかよ!????