f1347c6b.jpg映画『RAY』で、故Ray Charlesになりきった男、 Jamie Foxx。おそらく、どんな名優でも演じきれなかったであろうRayの役をつとめ上げられた理由は、このアルバムを聴けばよく分かる。つまりJamieはRayを演じたのではない。彼はシンガーとしての自分を、Rayという役柄を通じて表現したのだ。とかく物真似になってしまいそうなところを、彼は“自分のRay像”を演じることで乗り切ったのではないか。

さて、その Jamie Foxxのシンガー第2作が、この 『UNPREDICTABLE』。ぶっちゃけ、俳優としてステイタスを築いてしまったから、もっとお手軽なチョロい作品だろうと思っていた。ところがどっこい、聴いてビックリ。まさにカナザワのツボを刺激する内容。『UNPREDICTABLE =予測不能』とは、よくぞつけたり、である。きっとJamieはみんながそう言うと予測して、このタイトルをつけたんだろうな。でもその自信に見合う作品になっているから大したモノ。最近のロイク系新人たちは ドープな方へ行くか、ジャジー・ソウル/フォーキー・ソウルっての相場だけど、JamieはLuther VandrossとかBrian McNight、Eric Benetらを思わせるアーバン路線に進んだ。もちろんKanye絡みのヒップな曲もあるけど、こんな80'sっぽい上がりだとは思わなかった。これもまた『UNPREDICTABLE =予測不能』。

例えば 、Skip Scabrough作でKashif & Melisa Morganが有名にした<Love Changes>をMary J.と。そうかと思えば Earl Klugh & Bob Jamesの<Kari>をサンプリングしていたり、Herbie Hancock<Butterfly>をループにしたり、最近は単に"face"と名乗ることが増えたBabyfaceプロデュース作品もある。しかしココのお客様のポイントとしては、1曲目のタイトル曲だろう。クレジットと解説には New Birth <Wildflower>のサンプリングとあるが、そのまたオリジナルは、かのSkylark。そう、David Fosterが初めて主導権を取った、あのバンドである。New Birth のヴァージョンは、最近はアチコチでネタ化されてたみたいだが、カナザワ的にはLuther がプロデュースした Lisa Fisherのカヴァーの印象が強い。

…とまぁ、こんな風に、なかなかアーバンなワケですよ。さすがにポストLutherとは言えないが、音の傾向は見事にそう。Crusadersの<In My Wildest Dreams>をループにした Toni Braxtonの『LIBRA』とか、Artemis移籍第1弾でいきなり バラード・カヴァー集を出したFreddie Jackson(オープニングはPaul Davis<I Go Crazy>)とか、最近少し都会の香りが漂ってきているロイク方面ではあります。