1b11bcda.jpgジャム・バンド・シーンで名を馳せたソウル・ジャズ系のオルガン・トリオ、ソウライヴ。いま、彼らの2年ぶりの新作『NO PLACE LIKE SOUL』のライナーを執筆している。 エッ、コイツがソウライヴ!? そんな風に思った方。少なくないんじゃないかな。実はかくいう自分も、電話で依頼を受けた瞬間は、「オレでいいのかぁ?」なんて思ってたりして。

でも担当A&R氏の話を聞いて、「ほう、それなら」と。一瞬躊躇したのは、ソウライヴの音の変遷をキチンと把握してなかったから。やっぱり、ソラライヴ=ジャム・バンド/クラブ・ジャズというイメージが先行したんだね。でも02年作『NEXT』や前作『BREAK OUT』を聴き直して、そうそう、そうだった!と納得。進化のスピードを緩めないこのトリオは、とっくにゲスト・ヴォーカルやラップを入れたりして、斜陽にあるジャム・バンドの枠を大きく逸脱していたのだ。

このニュー・アルバムも、もちろんその延長。しかもビックリ、今回の最大のトピックは、インゥトゥメンタル主体だった彼らにヴォーカリストが加入したのである。楽器で延々とインプロヴァイズし合うのがジャム・バンドの真髄だとしたら、180°の方向転換。だから、未だに初期ソウライヴのイメージを強く持つ人ほど、違和感を抱く。でもキチンと彼らの変身ぶりをシッカリ認識してれば、「ほう、そう来たか!」と膝を打ってしまうワケだ。

もちろん持ち前のストリート感覚、濃密はファンキー度は揺らぐことなく。ただしシンガーを抱えたことで当然歌モノが増え、ジャズ色は後退した。逆に濃くなったのが、ロック〜ソウル〜R&Bの色合い。ヴィンテージ・ソウルや70'sのロックからのインフルエンスが随所に感じられ、ミクスチャー度は以前よりも高くなった。前のアルバムにはジミ・ヘンのカヴァーがあったが、今回のインスト曲には、まるでピンク・クラウド(Char!!)みたいなファンキー・ロックがありんす。新加入したトゥーサンは、レゲエにも強く影響された人らしく、2曲ほどレゲエを取り込んだのも新生面。

でも、何故あえてパーマネント・メンバーとしてシンガーを迎え入れたのか。前みたいにチャカ・カーンとかレジー・ワッツとか、曲ごとに適材のゲスト・シンガーを呼んできた方が完成度が上がるし、話題にものぼりやすい。
でも、オリジナル・トリオが求めたのは、きっとそういうことじゃないんだよな。この辺り、カナザワの見解はライナーに書いたので、是非6/2に日本先行発売されるコロムビア盤を購入されたし。日本向けボーナス曲として、彼らの代表曲<Steppin'>と<Azucar>のライヴ・ヴァージョン(日本公演のライヴ!)が追加されるそうです。

なお2ヶ月遅れの米国盤は、ジャズの名門コンコード傘下に再興されたSTAXからの発売。つまり、先日紹介したアース・ウインド&ファイアー・トリビュート『INTERPRETATION』と同じ。アルバム・タイトルが示す通り、ソウライヴのソウル/ロック傾倒は、これから本格化してきそう。その新たな第一歩がコレなんだな。