2252e607.jpgただいま執筆中のネタは、マイケル・センベロ同様、これもWounded Bird発クリンク経由で出るテレンス・ボイラン。アナログ発売時の邦題は、ズバリ『リリシズム』という。元々東海岸の出身で、まだアマチュアだったスティーリー・ダンの2人、ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーとバンドを組んでいた御仁。彼らの初レコーディングが、テレンスのファースト・アルバム『ALIAS BOONA』だったことは有名だ。

しかしその後は表舞台に出ず、L.A.へ移ってプロデューサーとして名を上げつつあった兄ジョン・ボイランのオフィスで働いたり。そして約8年後の77年になって、突然アサイラムから再デビュー。この『TERENCE BOYLAN』が出た。アサイラム発だからか、特にウエスココースト系のファンから注目され、「ジャクソン・ブラウンのよう」と評判に。なるほど、ちょっと青臭くてセンの細いヴォーカルは如何にもそれ風だが、ジャクソンよりもメロウな香りがあって、ほのかにジャズやソウルの色合いが。言うなればジャクソンとスティーリー・ダンを混ぜたら、ネッド・ドヒニーを真面目にしたようなのが出来た、ってな雰囲気か。

基本的に、AOR寄りのウエストコースト物、という印象があったけれど、今回ライナーを書くにあたって何度も聴き込んでいくうち、楽曲単位で見ていくと、イメージよりもカッチリ作られたアルバムではないか?という思いが沸々と。

実際、旧友フェイゲンがピアノで参加している<Don't Hang Up Those Dancing Shoes>と<Shame>は、バックもほとんどスティーリー・ダン関係者。チャック・レイニー(b)、ジム・ゴードン(ds)、ディーン・パークス(g)、ヴィクター・フェルドマン(el-p, perc)にティモシー・シュミット(back-vo)といった辺りで、<...Dancing Shoes>のD.パークスとテレンスのギターの絡み、<Shame>のグルーヴ感やティモシーのヴェールのようなハーモニーは実にそれっぽくて。
デイン・ドナヒューを思わせる(だってテレンスのプロデュースだし)<Hey Papa>では、リズム隊にセクションの2人を起用。ジャジーで浮遊感溢れる<Rain King>は、ジャズ・フュージョン界の大物サックス奏者、ジョン・クレマーとL.A.エキスプレスのジョン・グェラン(ds)、マックス・ベネット(b)、ヴィクター・フェルドマンをそのまま迎えた。こうしてユニットっぽいキャスティングをしたのは、もしかしてフェイゲンたちの影響かね? 他にもジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ルカサーといった連中も参加している。この時はまだTOTOはなく、これがルカサーの初めてのスタジオ・セッションだったと言われている。また国内盤には、ポーカロがポルカロと表記されていて。TOTO結成前から彼らに馴染んでいた世代には、いまだにポルカロって呼ぶ人、いるよねぇ(笑)

それともうひとつの発見。<Shake It>はイアン・マシューズが翌78年作『STEALIN' HOME』でリメイクし、彼最大のヒットに(全米13位)になったのだが、これがいま聴くと、映画『ラヴソングができるまで』のテーマ曲としてヒットしている<Way Back Into Love(愛に戻る道)>にソックリ。うーん、もしかしてパクリましたか!?(苦笑)なおイアン・マシューズは同時に<...Dancing Shoes>もカヴァーしてるので、要チェックです。

TERENCE BOYLAN(芽瑠璃堂)