cdf88775.jpgふと気づけば8月に突入、連日猛暑が続いている。暑いのはキライじゃないが、その中で汗を流しながら仕事するのはご免被る。こういう時はビーチでビールでも飲みながら、ビキニの美女を眺めているのに限るのダ。それが無理なら、やはりインドアでクールに過ごしたいもの。そう、こんな音に身を委ねながら…

この佳孝さんの新作は、初のブラジル・レコーディングによるセルフ・カヴァー・ベスト・アルバム。ボサノヴァ誕生50周年にコレを持ってきて、しかもゴッホ風の自画像で『ボクのこころ』と来た。これは相当の自信がないと、とてもできない芸当である。でも彼はいつも通りの自然体で、<プールサイド><憧れのラジオ・ガール><スタンダード・ナンバー><Midnight Love Call>といった代表曲の数々を、涼やかなブラジリアン・アレンジで甦らせている。

特にキモになっているのが、日本語とポルトガル語の2ヴァージョンで歌われた<モンロー・ウォーク>と<スローなブギにしてくれ>。Folla de Tresのヴォーカルで意表を突いてくる<モンロー…>に対し、<スローな…>ではキーを落として少し枯れた味を醸し出す。それぞれのアレンジは、元アジムスのジョタ・モラレスと才人セルソ・フォンセカだ。

更に唯一の新曲<Route 134>がこれに続く。車を持つ首都圏の男なら、若かりし頃に必ず走ったであろう、湘南の海岸線を抜ける国道。“Car Radio流れてたね コステロ”なんて歌詞もなかなか小粋で。

そしてエピローグは、ジョビンとヴィニシウスの<Chega de Saudade>を、ジョビンの孫ダニエルとジョイスの娘アナ・マルチンスと共に。日本を代表するブラジル音楽の専門家:吉田和雄のプロデュース・ワークと佳孝さんのキャリアがガッチリ噛み合った結果、浮ついた所のない、シッカリしたソフト・ラテン・アルバムが生まれた。これを聴いていると、体感温度が2〜3度下がるみたいだ。