russ_kunkelエッ、こんなの出てたの? そう思った人、多いんじゃないかと思う。かくいう自分も、PCに向かってそう呟いた一人。そう、ジェームス・テイラーやジャクソン・ブラウンを筆頭に、名だたる大物アーティストを支えてきた不世出の名ドラマー、ラス・カンケルの初リーダー作が、ほぼ一年前にサラッと発表されていたのである。

慌てて取り寄せて聴いてみると、音はアンビエントな響きのあるハイブリッドなインスト作品。楽曲によってはエキゾティックな民族音楽的エッセンスとスムース・ジャズ的要素が密に絡んでいて、言うなれば、エニグマやディープ・フォレストの西海岸的展開とも。

ただし、取り上げている楽曲は、さすが大物。ビル・ウィザース<Lovely Day>、キャロル・キング<So Far Away>、ジョニ・ミッチェル<Carey>、ジャクソン・ブラウン<Doctor My Eyes>、クロスビー・スティルス&ナッシュ<Just A Song Before I Go>、そしてJ.T.だけは特別に<Fire And Rain><Mexico><Don't Let Me Be Lonely Tonight>の3曲。でもこれは単に有名曲を選んだワケではなく、すべてラスがオリジナル・レコーディングでドラムを叩いてる曲だとか。ビル・ウィザースなんてチョイと意外だけれど、アルバムをチェックしたら、確かに彼が叩いていた。うー、スゴイっす

サウンド面の要は、鍵盤/プログラムを一手に担うジェイ・オリヴァー。そこへ楽曲毎に、サックスやトランペット、ヴァイオリン、ギターといったリード楽器が加わる。中にはジョー・ウォルシュやピーター・メイヤー、ディーン・パークス(以上g)、ミンディ(sax)なんて名も。

ラスはもちろん全曲で生ドラムとパーカッションを叩く。でも打ち込み系のシャープな音像の中で、ビシッビシッと響き渡るスネアの気持ち良さと言ったら。個人的には、思わずスティーヴ・ウィンウッド『ROLL WITH IT』でのラスのプレイを思い出した次第。デジタル音に囲まれても埋もれることなく、ディープで気骨のあるドラミングを聴かせている。

そういやラスってセッション数が凄いけど、リア・カンケル(ママ・キャスの妹)に始まり、カーリー・サイモン、故ニコレット・ラーソンと、女性遍歴もナニでした