graham_bonnetクーッ、アヒル! …ぢゃなかった、ニヒル。なぁーんて思わず茶化してしまいたくなる、グラハム・ボネットのファースト・アルバム。これが年末に紙ジャケ・リイシューされ、意外に評判を取っているらしい(失礼)。邦題もスバリ、『スーパー・ニヒリズム』(77年)。ルックスはまるで任侠系の御仁みたいだが、この人が後々レインボー、マイケル・シェンカー・グループ、そして自ら率いるアルカトラスと、ハード・ロック系の実力派シンガーとして人気を得るのだから、世の中よく分からない。

音楽性にしても、この頃はおおよそハード・ロック的ではない。このアルバムの収録曲なんて、ボブ・ディラン<すべてはおしまい(It's All Over Now, Baby Blue)>、キャロル・キング<Will You Love Me Tomorrow>、アル・グリーン<Tired Of Being Alone>、ホール&オーツ<Goodnight And Goodmorning>、プレスリー<Danny>、そしてスリー・ドック・ナイトやデヴィッド・ボウイ、デイヴ・エドモンズらが歌っているロン・デイヴィス作<It Ain't Easy>など、ほとんどがアメリカン・ポップス系のナンバーだったりする。しかもサポート陣は、UKスワンプやファンキー系パブ・ロック人脈にも繋がる英国のセッション・ミュージシャンたち。<Goodnight And Goodmorning>はまさにロック寄りのブルー・アイド・ソウルだし、初期のロッド・スチュワートを思わせるアレンジも。<Will You Love Me Tomorrow>でミッキー・ムーディー(後にホワイトスネイクで有名になる)が披露する甘美なスライドは、それこそジョージ・ハリスンを髣髴とさせる。そういえば、このアルバムはリンゴ・スターが立ち上げたレーベル “Ring O”からのリリースだった。これは何かの偶然だろうか。

しかし、レインボーの刷新を計っていたリッチー・ブラックモアやコージー・パウエルの耳に止まっただけあって、4オクターブのパワフルなヴォーカルだけは既に完成の域に。ポップな楽曲とパワー・ヴォイスのアンバランスさも面白く、オーストラリアでウケたのも何となく分かる。ただ問題なのは、セカンド『NO BAD HABITS(孤独の叫び)』のジャケみたいな、ブライアン・セッツァー風のルックス。それを曲げなかったグラハムはリッチーに疎まれ、アルバム1枚でレインボーを追われることになる。それでも今ではそれがトレ−ドマークになっているのだから、グラハムも大したモノ。イングヴェイ・マルムスティーンやスティーヴ・ヴァイを売り出すなど、シーンへの貢献も大きい。