rah_bandベスト盤は何度か出たものの、何故かオリジナル再発は無視されていたラー・バンド。やっと全盛期の3作が、Blu-Spec/プラケ仕様でリイシューされた。心待ちにしていたカナザワは、思わず予約してゲット。まぁ、アナログなら持っているんですけど…。

ラー・バンドといえば、今でこそフィル・スペクターに呼ばれてビートルズ『LET IT BE』にストリングス・アレンジャーとして参加したリチャード・ヒューソン(RAH=Richard Anthony Hewson)のワンマン・プロジェクトとして知られている。が、輸入盤が入ってきて日本に紹介された83年当時は、ほとんど謎のバンドに近かった。しかも、シンセと打ち込みを駆使したエレクトロ・ダンス・ポップというスタイルが知れ渡り、クラブ方面や電子音楽愛好家の間で再評価されたのは、90年代に入ってから。リアルタイムでは一時ブームとなったブリティッシュ・ジャズ・ファンク勢と一緒に括られ、シャカタクあたりと比べられていたワケである。カナザワもそうした流れで、このアルバムで初めてラー・バンドを知り、輸入盤をゲットした。再評価組には「シャカタクと?」だろうが、両者の間にポール・ハードキャッスルのユニット、ファースト・ライトあたりを置いてみると、なるほど、腑に落ちたりするんじゃないだろうか。そのココロは、クールでアーバンなキーボード・サウンド、匿名性の高い女性ヴォーカル等など…。確かに本作スターター <Messages From The Stars>なんて、打ち込みのビートをバンド・サウンドに置き換えたら、そのままシャカタクになる。

ファンカラティーナ!なんて呼称を思い出してしまう<Roll Me Down To Rio>、ラー・バンドの代名詞たる<Perfumed Garden>、キレ味鋭いギター・カッティングに腰が浮いてしまう<Party Game>と、懐かしいのに不思議と新しい。やっぱり楽曲時代に普遍的魅力が備わっているのと、打ち込み黎明期のアナログっぽい肌触りがフィットするのだろうか。シンセの音色が温かいし、ドタバタしたリズムも妙に人間臭かったりする。カナザワの中では、この辺りからスウィング・アウト・シスターやマット・ビアンコに繋がっていくんだな。

ちなみに、3作中もっともファンキーな80年のセカンド『RAH』、ヤン冨田や須永辰緒、砂原良徳らがネタ化したりカヴァーした名曲<Clouds Across The Moon>を収めた4作目『MYSTERY』も、見事に同時リイシュー。ただし、ルーペを使わないと読めないようなオビとライナーは、ちょっと配慮不足かも。そもそもオビのキャッチ・コピーなんて、店頭で買うかどうか悩んでいる人にアピールするのが最初の目的なのだから、みんなに読んで戴けるようにせにゃあ意味ナイじゃん