george_movie世間は3連休の中日。でもこちとらは、正月も恒例行事をこなしただけで、ずーっとアース・ウインド&ファイアーの原稿書きにドップリ。この3連休も、せいぜい買い物と外食に出るくらいだろう。でも少しは相方に付き合わないと…、というコトで、しばしカウチポテト状態でジョージのドキュメンタリー映画を観た。実は5000セット限定という、未発表音源CD付きのコレクターズ・エディションを予約して買っていたのヨ



映画『HELP!』から引っ張ったと思しき、水面から顔だけ出しているジョージを見て、直感的に “サイレント・ビートル” を象徴する作品かな?と思ったが、それは当たらずとも遠からず。ドキュメントにありがちな山あり谷ありのドラマチックな人生を描くのではなく、ジョージの内面、心の動きを、年代と共にクールに捉えているのだ。

DVDで2枚分。日本のみの劇場公開では、休憩を挟んで4時間という長尺のストーリー。それが至って淡々と、心象風景を見ているような静かさで進んでいく。劇的なビートルズのアンソロジー映像を表の物語だとすると、これはジョージ・サイドから観たディープなインサイド・ストーリー。だからビートルズの歩み、その後のジョージの足取りを知らないと、ひどく退屈な映画に感じるかもしれない。もっとも、ジョージに興味のある人でないと、この手のドキュメンタリーは観ないだろうが… でもビートルズに感化されて、メンバーの人となりに興味を持っている人ならば、何か思う処がきっとあるはず。<Something>や<Here Comes The Sun>や<My Sweet Lord>に込められた深い意味、歌詞や訳詞を読んでいるだけでは伝わって来ないジョージの胸の内が、今にして初めて分かるのだ。

“サイレント・ビートル”と言われたジョージが、思想やインド音楽の話になると急に目つきが変わって雄弁になるところはチョッピリ怖くも感じたが、一番怪しいオーラを発散していたのは間違いなくフィル・スペクター。親友エリック・クラプトンや前妻パティ・ボイドも、思った以上に赤裸々に語っている。ライヴ映像は意外に少なく、喉を痛めて声が出ずに不評を託った"Dark Horse Tour"(ビリー・プレストンやトム・スコット、ロベン・フォードらが参加)など実はかなりの熱演で、もっと観たい!と思わせる。トラヴェリング・ウィルベリーズが意外に大きく扱われているのに、生涯最後のライヴとなったクラプトンとのジャパン・ツアーがオミットされているのは、スコセッシ流のヒガミかしらね?

天才的メロディメイカーのポール、自身の哲学を持つジョンに対して、ジョージは“第三の男”とも呼ばれた。才人の2人には並び立てず、リンゴのようなマスコット・キャラでもない。結果的に“第三の男”を気取るしかない、というわけだ。しかし実際のジョージは、すべてを達観していた。サイレントなのは物質社会にいる時の表の顔。その内側は、誰よりも豊かな精神世界が広がっていた。それを伝えてくれたのが、このドキュメンタリーである。

なおコレクターズ・エディションに付属の未発表音源は、大半が『ALL THINGS MUST PASS』のアコースティック・デモ。それにしても、インタビューに答える奥様オリヴィア・ハリスンを見つめながら、「あぁ、この人にコンタクトできれば、Dark Horse Labelの再発ができるんだな。もちろん、かのアティテューズも…」と思ってしまった自分は、つくづく俗物だよなぁ〜