williams salterご好評を頂戴しているスティーヴ・ギブとチーズの紙ジャケ・再発を実現したクリンク・レコード【TK’s Mellow Treasures】の第2弾は、ラルフ・マクドナルドやジョン・トロペイなどのフュージョン好作を生んでいるTKグループ傘下のMarlinレーベル物から、ライト・メロウなシティ・ソウル作品を2枚。ひとつはウィリアム・イートンの『STRUGGLE BUGGY』、もうひとつは上掲のウィリアム・ソルター 『IT IS SO BEAUTIFUL TO BE』である。ただ今、その解説を順に執筆中…

彼らは共にラルフ・マクドナルドの参謀役を担う連中。ラルフといえば、昨年12月に肺ガンで亡くなるまで、ニューヨークを代表する名パーカッション奏者として鳴らした人物。それと同時に、作曲家/プロデューサーとしても名を馳せ、ソングライターとしてはロバータ・フラックとダニー・ハサウェイの共演で大ヒットしたデュエット定番<Where Is The Love>、スリー・ディグリーズやロバータ・フラックが歌ってロッド・スチュワートで有名になった<Trade Winds>、そしてビル・ウィザースをフィーチャーしたグローヴァー・ワシントンJr.(sax)のグラミー受賞曲<Just The Two Of Us>などを送り出し、プロデュースでは、ロバータやグローヴァー『WINELIGHT』を筆頭に、ボビー・ハンフリーやジョー・ファレル、エリック・ゲイル、そして我らが渡辺貞夫やUKロック・シンガーのマギー・ベル、ジャッキー・デシャノンなどを手掛けて来た。

そのラルフの曲作りのパートナーがウィリアム・ソルター。そして時に作曲をしながら、主にアレンジやオーケストラの指揮を手掛けるのがウィリアム・イートン、という間柄である。60年代初頭、<バナナ・ボート>で知られるハリー・ベラフォンテのグループで一緒になった3人は、意気投合し、67年に共同で音楽出版社アンティジアを設立。ロバータや、彼女が所属するアトランティック・レコード周辺でコンスタントにヒットを出し始めた70年代半ばに、ローズバッドという自前のレコーディング・スタジオを作った。その頃から、作編曲からプロデュースまでを一手に引き受けるサウンド・クリエイター・チームとして活躍し始めた。

その初期段階に送り出したのが、ラルフとこの2人のウィリアムのリーダー作。まずはラルフの初ソロ作『SOUNDS OF A DRUM』が76年に世に問われ、翌77〜78年に、ソルターとイートンの作品が続いた。参加メンバーも似たような感じで、スティーヴ・ガッド(ds)、エリック・ゲイル(g)、リチャード・ティー(kyd)のスタッフ組に、アンソニー・ジャクソン(b)、ヒュー・マクラッケン(g)、ドン・グロルニック(kyd)、トム・スコット(sax)、ブレッカー・ブラザーズ(horn)、パティ・オースティン(vo)、グウェン・ガスリー(vo)、ヴァレリー・シンプソン(vo)らが、それぞれに参加している。早い話、皆さんがよく知っているグローヴァー作品や、ナベサダ『RENDEZVOUS』の先鞭となるような、琥珀色のコク深いアーバン・クロスオーヴァー・サウンド。その顔ぶれで音が見えてくる方なら、まず外すことはないだろう。

2人の違いは、ソルターがシンガー・ソングライターとしての自分を押し出して、まったりと、朴訥で味わいのあるヴォーカルを披露しているのに対し、イートンは、作編曲家に徹してセッション・シンガーにヴォーカルを委ね(自身のリード・ヴォーカルは2曲だけ)、ファンキーなメロウ・グルーヴを聴かせたり、ドラマ仕立ての曲を聴かせたりと、バラエティ感の捻出に工夫を凝らしたところ。

それでもラルフの作品や、3人が絡んだアンティジア作品と一緒に並べると、なるほど、どれも同じ70年代後半のニューヨークの香りが漂ってくる。確かにインパクトは薄いけれど、ずーっと長く付き合っていきたくなるような、心に滲みる好作だ。

発売は、どちらもクリンク/芽瑠璃堂先行で8月22日。

IT IS SO BEAUTIFUL TO BE / WILLIAM SALTER

william eaton
STRUGGLE BUGGY / WILLIAM EATON