LRB_013
輸入盤の発売からおよそ10ヶ月遅れ。それでも“これはカッチリ紹介すべし”と思っていたのが、このリトル・リヴァー・バンド(以下LRB)の最新作だ。このアートワークで原盤が伊Frontierというと、思わず “やっちまったか”という不安が走るが、聴けばすぐにそれは杞憂だった気づく。それどころか、“35年ぶりの来日”と巷で盛り上がっているボストンより、アルバムの充実度は一枚も二枚も上、と信じて疑わないほどだ。

確かにノッケのヴォーカルには僅かにオート・ヴォイスが掛かっていて、ちょっと今様メロディック・ロック風の音作りではある。けれどスタイルは、如何にもLRBらしいウエストコースト・サウンド。熱いクセに爽快感のある彼らのシグネイチャー、ヴォーカル・ハーモニーも健在だ。さすがに名曲<Reminiscing>に迫るようなキラー・チューンはないし、当時よりもロック色は濃い。それでも11のオリジナル収録曲はどれも粒揃いで、穴らしい穴は見当たらず。むしろ、来年でデビュー40周年を迎える彼らにとっては、これくらい元気があった方がちょうど良いと思える。

…とはいえ、一時は復帰していた初期の看板シンガー:グレン・シャーロックの姿はなく、グループ誕生の地:オーストラリア出身のメンバーさえいない。現在のリーダーは80年に参加したベースのウェイン・ネルソン(カンサス出身)で、他の4人のメンバーは、いずれも00年以降にLRBへ加入した新参者だ。世紀が変わったあとも何年かおきにアルバムを出していたが、その多くがマイナー・レーベル発信の企画物やライヴ盤ばかり。ノスタルジア・サーキット廻りの懐メロ・バンドに身を落とした感が強かったのも、致し方なかった。

そんな近年のバンドの在り様を、一気に払拭したこの会心作。LRBファンには、グレン・シャーロックが最初に脱退してジョン・ファーナムが参加していた時期のサウンド、と言えば分かりやすいだろう。それでいて、『SLEEPER CATCHER(夢追人)』や『FIRST UNDER THE WIRE(栄光のロング・ラン)』、『TIME EXPOSURE』といった作品群で米国チャートへ攻勢をかけた70年代末〜80年の勢いを取り戻している。

個人的な想いとしては、武道館で35年ぶりのボストンを観るより、小さめのヴェニューでこのLRBを見たいな。