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相方のリクエストにより、仕事を押して、映画『ジャージー・ボーイズ』を観に近隣のシネコンへ。これは、かのフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのヒストリカル・ムーヴィー。元々はミュージカルとして人気を博していた作品を、名優にして音楽好き、最近は監督としても評価の高いクイント・イーストウッドが映画化した。

フォー・シーズンズといえば、62年のNo.1ヒット<Sherry>を皮切りに、<Big Girls Don’t Cry(恋はヤセがまん)>や<Walk Like A Man(恋のハリキリボーイ)>、<Rag Doll(悲しきラグ・ドール)>の連続ヒットで全米を制覇した人気ポップ・グループ。ビートルズ旋風が上陸するまでトップ・アーティストの座を独占し、ビートルズ人気爆発後も唯一それに張り合った連中だ。その下積み時代からデビュー、全盛期、そして衰退期からヴァリのソロ・デビュー、そしてオリジナル・メンバーでのリユニオンに至るまで、グループの歴史の光と影をヴィヴィッドに描いている。

ただし、実際の足跡と比べてしまうと、何度となく “アレッ” という場面に出くわす。つまり、ドキュメンタリーとしてのツッコミ処は少なくなくて…。例えば、オリジナル体制崩壊後の歩みはほとんど触れられず、彼らのキャリアを知らないと、そのままヴァリ独立〜グループ解散を辿ったかに見える。でも実際はメンバー交替で窮地を乗り越え、ヴァリもグループとソロ活動を併行させた。AOR世代のファンには馴染みのあるドン・シコーニは、70年代以降のメンバーである。

それでも映画としては抜群に面白く、完成度は高い。監督の音楽愛もシッカリ感じられるし、出演陣が演技しながら代わる代わるナレーションを務めるのも、面白いアイディアだ。また、当時のイタロ・アメリカンのバンドマンたちが、マフィアとは切っても切れない仲だったことも、名画『ゴッドファーザー』に描かれていた通り。とりわけボブ・ゴーディオ加入の流れ、名曲<シェリー>やヴァリのソロ・ヒット<君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)>誕生のプロセスは、多少の脚色があったとしても、ポップス・ファンには充分スリリングに映る。先月逝ってしまったプロデューサー:ボブ・クルー(最近、彼の作品集が登場)が、実はああいうキャラクターだったことは、これを観て初めて知った。彼との邂逅が、かのブリル・ビルディングだったなんて、ホント出来過ぎ。

60〜70年代の米国ポップスに興味のある向きは、必ず観ておくべき映画だ