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70年代終盤〜80年代始めのディープ・ソウル名盤を、Blu-Spec CD2/最新デジタル・リマスターの高音質と充実の紙ジャケット仕様でお届けするソニー【Modern Deep Soul】コレクション。現時点で全10作のリリースが予定されているが、その第1弾5作品が届いた。今回出るのは、今年6月27日にこの世を去ったボビー・ウーマックの3作と、スタックスで活躍したジョニー・テイラーの米Columbia移籍後の2作。その中から、ボビー・ウーマックの79年作『ROAD OF LIFE』をピックアップしたい。

このアルバムは、ボビーがアリスタに遺した唯一の作。セールス面で低迷した米Columbia期の後を受けた力作で、チャート・アクションもまずまずだった。が、すぐに新興レーベルのビヴァリー・グレンへ移って名盤『THE POET』3部作をスタートさせたため、あまり取り沙汰される機会がなく、半ば埋もれた存在になっていた。

しかしながら、R&Bチャート40位をマークした<How Could You Break My Heart>が、モダン・ソウルの名曲として一部で熱く語り継がれ、87年になって英国でシングル・リイシュー。それを機に知名度がグンとアップしたそうだ。87年というと、ボビー自身がMCAで奮闘していた時期だが、コトは英国。きっとそれ以上に、ボビーがローリング・ストーンズ『DIRTY WORKS』(86年)に参加して、シングル<Harlem Shuffle>でバック・ヴォーカルを取ったり、複数曲でギターを弾いて話題をさらったコトが大きかったと推察する。

録音はマッスル・ショールズ・スタジオ。当然バックには、ジミー・ジョンソン/ラリー・バイロン/レジー・ヤング)g)、バリー・ベケット/ランディ・マコーミック(kyd)、デヴィッド・フッド(b)、ロジャー・ホーキンス(ds)など、お馴染みのマッスル・ショールズ・リズム・セクションの面々が参加している。そこに、プロデューサーも兼ねるパトリック・モーテン(kyd)が参入。ボビーはもちろん、弟セシル・ウーマック(ウーマック&ウーマック/13年2月他界)もギターを弾いた。

…となれば、収録曲も当然ウーマック兄弟の書き下ろしが中心になる。加えて件の<How Could You Break My Heart>はボビーとモーテンの共作。『THE POET』でもセンスの良さを発揮したモーテンとの邂逅は、一足早くココで花を咲かせた。

また<The Roots In Me>は、ボビーとリオン・ウェアの共作である。熱く分け入る女性ヴォーカルは、リオン制作でアルバムを出しているメリサ・マンチェスター。2人の蜜月は78年の好盤『DON'T CRY OUT LOUD』でピークを迎えたものの、その後も楽曲提供で繋がりがあった。ましてメリサの79〜80年作は、南部アトランタ録音。そうしたセンから、リオンがメリサとボビーを結んだのかもしれない。そのリオンは他にも2曲ヴォーカル・アレンジを担当。リオンとは無縁に見えるカヴァー曲<I Honestly Love You>も、実はメリサと親友関係にあったピーター・アレンの作だったりする。

この<I Honestly Love You>という曲は、オリヴィア・ニュートン・ジョンが最初に歌って有名になった。が、カントリー調のオリヴィア版に対し、ボビーのヴァージョンは見事にしょっぱいソウル・バラードとなっている。メリサは昔からアレンの曲をたくさん歌っていて、リオン制作モノや80年作でも取り上げていた。そうして候補に挙がっていた中から、この曲をボビーにリコメンしたのだったら面白い。

一方バック・ヴォーカルは、London Recordsからのリリースもある女性3人組ホッジス,ジェイムス&スミス。AOR系ファンには、デヴィッド・フォスターの初フル・プロデュース作であるジェイ・P・モーガンのオケ流用騒動で知られているだろう。

コテコテのイメージがあるサザン・ソウルだけど、やはりボビー・ウーマックはいろいろコチラ側にも
馴染みやすい。次回の【Modern Deep Soul】コレクションでは、レオン・ヘイウッドが楽しみだな。