
6月の幕開けは、楠木勇有行 “デビュー43周年記念 カシオペアを歌う” @目黒Blues Alley Japan。楠木さんとは、aosis レーベル時代の仕事や、楠木恭介名義のアルバム再発などでご縁があり、自宅スタジオまで取材にお邪魔した。長女Emmlyちゃんのデビューの時も、某誌でインタビューしたな。そんな間柄なので、約10年ぶりというライヴにも駆けつけ…。スタジオ・シンガーとしてコカ・コーラを筆頭に数え切れぬほどのCMソングを歌ってきたうえ、現在はヴォーカル・コーチとしてクラスを持つ楠木さんである。ヴェニュー内はそうした仲間や教え子たちが多く詰めかけ、自分もaosisのプロデューサーで初期SMAPに洋楽ネタを仕込んだ鎌田氏と超久しぶりの再会を果たした。“あんみつ” の2人の顔もあったが、楠木さんと御厨(みくりや)さんは、かつて一緒にキャメル・ランドというバンドでアルバムを出したことがあった。
バックを務めるのは、安部潤(kyd)、須藤満(b)、川口千里(ds)、伊藤ハルトシ(g,violin)、長尾弥來, vahoE, そして次女ALISAちゃん(cho) という陣容。それでまずはaosis時代の2枚のアルバムから、シティ・ソウル〜AOR系のオリジナル曲、MISIAに提供した<雨の日曜日>、そして彼のルーツであるソウル・ナンバーから<What's Going On>などを披露。バックがフュージョン系のメンツなので、コンパクトにまとまってしまう懸念もあったが、そこは楠木さんの持ち味と安部さんのアレンジの妙だろう。懐の深いグルーヴに、ゆったり身を任せることに。
とりわけ驚いたのが、千里ちゃんのドラムだ。そりゃー上手いのは分かっていたし、ライヴも観たことあるが、歌モノのバッキングは初めて聴く。基本インスト系ドラマーだと思っていたので、シンガーの後ろでもこんなにビシビシッ
とグルーヴできるとは
イヤ、実際いるのよね。名の通ったフュージョン・ドラマーなのに、歌モノになるとあんまし良くない人って…。でも彼女は超若い細身女性ドラマーなのに、スネアの響きがイイし、フィルの手数も全然邪魔にならない。男勝りどころか、これなら充分セッション・ワークでも喰ってけますワ
ま、“レーザーディスクって何?” と、メンバーを仰け反らせたのはご愛嬌だけど…
2nd Stageになると、スペシャル・ゲストの野呂一生 登場。楠木さんがカシオペアのワールド・ツアーでゲスト・シンガーとして歌った曲や、野呂さんプロデュースでカシオペアのレーベルから出したソロ・アルバム『CHOOSE ME』(87年)収録曲など、1stとは一転、フュージョン色の強いパフォーマンスになる。当時カシオペアは、デヴィッド・ボウイのブレーンとして知られるカルロス・アロマーのプロデュースで、本格的なヴォーカル曲に挑戦。<Missing You>の全米No.1ヒット持つジョン・ウェイト(元ベイビーズ/後にバッド・イングリッシュ)をシンガーに迎え、『SUN SUN』(86年)というポップ・ロック寄りのアルバムを出した。
だがジョンはツアーに来てくれない。そこで白羽の矢が立ったのが楠木さんだったのだ。既に“楠木恭介” としてデビューしていたが、この時から “楠木勇有行” を名乗り、カシオペアのツアーに同行。MCでは当時の笑えるエピソードも披露された。この時に“楠木”というシンガーの存在を知った音楽ファンは多いはずで、自分もまさにそうだった。当時のツアーの模様を捉えたCD/LD『CASIOPEA PERFECT LIVE』LIVE』で、若き日の彼の歌いっぷりが楽しめる。
しかし『SUN SUN』は、そうした企画色の強い作品ゆえ、カシオペア・ファンの間でも賛否が分かれた。MCでも話していたが、野呂さんでさえ、この辺りの曲をプレイするのはその時以来だそう。案の定、普段のカシオペアとも楠木さんの持ち味とも違った、テクニックばりばりのロック・フュージョンの世界に。ノリが豪快で畳み掛けるようなスタイルだから客席は結構盛り上がったが、余りに雰囲気が違うので、当時の事情を知らないオーディエンスは少々とまどったのでは? 個人的には、アル・ジャロウのカヴァーで各メンバーのソロ廻しを組み込んだ<Spain>に魅了された。
J-R&Bの隆盛を通過した今、マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイのようにしななやかに歌える男性シンガーは日本にも少なくなくなった。でも楠木さんのように、たっぷりと豊かな声量で大きなスケール感のある野太いソウル・ヴォーカルを聴かせられる人は、未だ稀有。本当はもっともっと活躍していい実力派である。なので、せめてライヴだけでも定期的にやって欲しいところ。今回は久しぶりのライヴなので、華のあるゲストが必要だったのは分かるが、でももし次があるなら、今後は1stセットのように、もっと “らしさ” を前に出したパフォーマンスだけで勝負して欲しい。我々が本当に聴きたいのは、その本物のヴォーカルの魅力、声の良さなのだから。
-1st set-
1. Lemuria
2. Sahara-No-Kaze
3. Gotta Get It Up
4. Make It Happen
5. 雨の日曜日
6. All My Life
7. What's Goin' On
- 2nd Set -
8. Nessa
9. What Can Speak Can't Lie
10. Something Wrong
11. Choose Me
12. Spain
13. In The Moment
14. Oh 愛
- Encour -
15. Sun
16 For All We Know
とりわけ驚いたのが、千里ちゃんのドラムだ。そりゃー上手いのは分かっていたし、ライヴも観たことあるが、歌モノのバッキングは初めて聴く。基本インスト系ドラマーだと思っていたので、シンガーの後ろでもこんなにビシビシッ
とグルーヴできるとは
イヤ、実際いるのよね。名の通ったフュージョン・ドラマーなのに、歌モノになるとあんまし良くない人って…。でも彼女は超若い細身女性ドラマーなのに、スネアの響きがイイし、フィルの手数も全然邪魔にならない。男勝りどころか、これなら充分セッション・ワークでも喰ってけますワ
ま、“レーザーディスクって何?” と、メンバーを仰け反らせたのはご愛嬌だけど…
2nd Stageになると、スペシャル・ゲストの野呂一生 登場。楠木さんがカシオペアのワールド・ツアーでゲスト・シンガーとして歌った曲や、野呂さんプロデュースでカシオペアのレーベルから出したソロ・アルバム『CHOOSE ME』(87年)収録曲など、1stとは一転、フュージョン色の強いパフォーマンスになる。当時カシオペアは、デヴィッド・ボウイのブレーンとして知られるカルロス・アロマーのプロデュースで、本格的なヴォーカル曲に挑戦。<Missing You>の全米No.1ヒット持つジョン・ウェイト(元ベイビーズ/後にバッド・イングリッシュ)をシンガーに迎え、『SUN SUN』(86年)というポップ・ロック寄りのアルバムを出した。
だがジョンはツアーに来てくれない。そこで白羽の矢が立ったのが楠木さんだったのだ。既に“楠木恭介” としてデビューしていたが、この時から “楠木勇有行” を名乗り、カシオペアのツアーに同行。MCでは当時の笑えるエピソードも披露された。この時に“楠木”というシンガーの存在を知った音楽ファンは多いはずで、自分もまさにそうだった。当時のツアーの模様を捉えたCD/LD『CASIOPEA PERFECT LIVE』LIVE』で、若き日の彼の歌いっぷりが楽しめる。
しかし『SUN SUN』は、そうした企画色の強い作品ゆえ、カシオペア・ファンの間でも賛否が分かれた。MCでも話していたが、野呂さんでさえ、この辺りの曲をプレイするのはその時以来だそう。案の定、普段のカシオペアとも楠木さんの持ち味とも違った、テクニックばりばりのロック・フュージョンの世界に。ノリが豪快で畳み掛けるようなスタイルだから客席は結構盛り上がったが、余りに雰囲気が違うので、当時の事情を知らないオーディエンスは少々とまどったのでは? 個人的には、アル・ジャロウのカヴァーで各メンバーのソロ廻しを組み込んだ<Spain>に魅了された。
J-R&Bの隆盛を通過した今、マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイのようにしななやかに歌える男性シンガーは日本にも少なくなくなった。でも楠木さんのように、たっぷりと豊かな声量で大きなスケール感のある野太いソウル・ヴォーカルを聴かせられる人は、未だ稀有。本当はもっともっと活躍していい実力派である。なので、せめてライヴだけでも定期的にやって欲しいところ。今回は久しぶりのライヴなので、華のあるゲストが必要だったのは分かるが、でももし次があるなら、今後は1stセットのように、もっと “らしさ” を前に出したパフォーマンスだけで勝負して欲しい。我々が本当に聴きたいのは、その本物のヴォーカルの魅力、声の良さなのだから。
-1st set-
1. Lemuria
2. Sahara-No-Kaze
3. Gotta Get It Up
4. Make It Happen
5. 雨の日曜日
6. All My Life
7. What's Goin' On
- 2nd Set -
8. Nessa
9. What Can Speak Can't Lie
10. Something Wrong
11. Choose Me
12. Spain
13. In The Moment
14. Oh 愛
- Encour -
15. Sun
16 For All We Know









































