darlene love
これは元気の出るアルバム。アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞した映画『バックコーラスの歌姫たち』(13年)でフィーチャーされ、忘れ去られた…というか、今まで知る人ぞ知る存在だったダーレン・ラヴが、なんと27年ぶりに全曲新録のニュー・アルバムを出した。映画を見て、“なんだ、全然現役ぢゃん!”と思った人は少なくないと思うが、御歳74歳、その歌声はマジでパワフルだ。

プロデュース/アレンジを一手に引き受けたのは、ブルース・スプリングスティーンの盟友にしてEストリート・バンドの要であるスティーヴ・ヴァン・ザント。彼の楽曲提供も3曲あり、オープニング<Among The Believers>は、彼がリトル・スティーヴン名義で発表したソロ作からのリメイクになる。もちろんブルース提供も2曲あり、彼のポップなメロディメイカーぶりが窺える出来。ダーレンとブルース、スティーヴの仲は、80年代初めに彼女がソロ・シンガーを目指し始めた頃、ショーケース・ライヴで<Hungry Heart>を演ったのが縁らしい。

先行シングル<Forbidden Nights>と、ビル・メドレー(元ライチャス・ブラザーズ)とのデュエット<Still Too Soon To Know>は、共にエルヴィス・コステロの作品。前者は未完のミュージカルに提供されたバラードをスティーヴがビート・アップさせ、60’sスタイルのソウルフルなミディアム・チューンに作り変えた。

またボン・ジョヴィ風の<Little Liar>は、ジョーン・ジェットのカヴァー。ダーレンとは同じマネージメントにいた時期があって、<Forbidden Nights>のPVにも友情出演しているそうだ。ロック系のカヴァーといえば、元シルヴァーヘッド〜ディテクティヴ〜パワー・ステーションで歌っていたマイケル・デ・バレスの楽曲も。更にジミー・ウェッブの書き下ろし新曲、バリー・マン=シンシア・ワイルの曲もある。ディーヴァ復活にふさわしい、なかなか豪華なアルバムなのだ。

そのハイライトは、因縁のフィル・スペクターがアイク&ティナ・ターナーで英国のみ大ヒットさせた<River Deep Mountain High>のカヴァー。最初にこのアルバムを手にした時、個人的にティナの80年代の復活劇を思い浮かべていたが、CDを聴き進めてこの曲に遭遇し、妙に納得するモノがあった。実際は、ダーレンが80年代にミュージカルへ出演した時のアタリ曲だったそうで、それをキッカケに映画に出演したり、初のソロ作『PAINT ANOTHER PICTURE』(88年)に繋がったという。もっとも初アルバムが凡作に終わったため、彼女は “次はブルースやスティーヴと組んで…”と考えていたそう。その意味では、20余年もタイミングを待って作った作品だから、彼女がヒートアップするのは当然と言える。そして最後は濃厚なゴスペル2連発で…。

日本ではタイミング良くフィレス関連の再発も同時進行していて、ダーレンが覆面でリード・ヴォーカルを取ったクリスタルズのヒットなどがオリジナル・アルバムで再発されている。“イントロデューシング” という今更のタイトルが、本格的再評価のノロシになればイイな。