charles earland 80
昨日に続いて、リイシューが始まった廉価シリーズ【ソニー・クロスオーヴァー&フュージョン・コレクション1000』から、カナザワ執筆の一枚を。今回のチョイスは、なんと世界初CD化となるチャールズ・アーランドの80年作『COMING TO YOU LIVE』である。

一般的にチャールズ・アーランドと聞いて思い出すのは、名門プレスティッジからの初リーダー作にしてソウル・ジャズの名盤『BLACK TALK』(70年)だろう。それから数年間、彼はレーベルの旗頭となってオルガン・ジャズの人気作を連発。70年代後半はミューズやマーキュリーでリリースを続け、楽器もオルガンからエレキ・ピアノやシンセサイザーへと移行、ディスコ・アプローチを試みたりした。当然ジャズ・ファンには卑下されたが、元々アーランドはサックス吹きとしてオルガン奏者ジミー・マクグリフのツアーに参加し、彼に感化されてオルガンに転向した変わり種だった。

このアルバムのサウンド・プロデュースは、ウェルドン・アーヴィンと“トムトム84” ことトム・ワシントン。以前から宇宙をモチーフにしたり、自分のバンドに “オデッセイ”と名付けるなど、アース・ウインド&ファイアーへの意識をチラつかせていたアーランドだから、トムトムと邂逅は「願ったり叶った利」だったろう。78年作『PERCEPTIONS』でファンク・バンドSKYYと手を組み、その後トムに接近。彼との最初のシカゴ録音では、キャメオと渡り合っている。そしてこのアルバムではニューヨークに場所を変え、より深いコラボを目指したワケだ。

一方のアーヴィンは、ニーナ・シモンの音楽監督として名を上げた御仁。若きミュージシャンたちが凌ぎを削るニューヨークはジャマイカ地区で首領と崇められ、そこからレニー・ホワイトやマーカス・ミラー、トム・ブラウン、オマー・ハキムらが輩出された。このアルバムもアーヴィン=マーカス・ミラー人脈を柱にしたキャスティング。まだ20歳そこそこだったマーカス以下、ドック・パウエル(g)、ヨギ・ホートン(ds)、バディ・ウィリアムス(ds)、バーナード・ライト(kyd)、ドン・ブラックマン(kyd)といったジャマイカ勢に、メルヴィン・スパークス(g)やハロルド・ヴィック(sax)、アービー・グリーン(trombone)といったベテラン勢が乗る構図になっている。他にもブレッカー兄弟、プレスティッジやT.K.でソロ作を出したエディ・ダニエルズ(sax)が参加。リード・ヴォーカルには、スティーヴィー・ワンダーのワンダーラヴ出身でセッションでも活躍するアレックス・ブラウン、この時期のアーランド作品の常連シェリル・ケンドリック、そしてニューヨークのゴスペル・クワイアから独立したリヴェレイションの中核フィル・バロウがフィーチャーされた。

そうした手勢を従えたアーランドが、久々にオルガンをバリバリ鳴らしているのも嬉しいところ。この時期、ジャマイカ・ファミリー以外で若きマーカスを重用したミュージシャンというと、ロニー・リストン・スミスの名が真っ先に上がる。でもこのアーランドの作品はあまり知られていないようで、もっと語られてしかるべき。だってかのグローヴァー・ワシントンJr.も、このアーランドのグループから独立したのだから…。



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