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今日はビクターの【和フュージョン40W】の8月末発売分から、カナザワが解説を担当させて戴いた日野皓正の代表作『CITY CONNECTION』(79年)をピックアップ。

一般的にはヒノテル初のフュージョン・アルバムとして扱われる作品だが、実際のところヒノテルは、突然フュージョンに鞍替えしたワケではない。確かに元々はハード・バップやフリー・ジャズなどストレート・アヘッドな指向性が強かった人だけれど、78年発表『HIP SEAGULL』ではジャズ・ファンクやスピリチュアル・ジャズを意識し、マイルス・デイヴィスやウェザー・リポートを髣髴させるリアル・クロスオーヴァーに挑戦。まだ新人だったジョン・スコフィールド(g)や、マイルス・デイヴィス・グループ出身でロバータ・フラックのサポートでも活躍していたエムトゥーメイ(perc)と交わっている。最近はレア・グルーヴ/クラブ・ジャズ方面で再評価著しいが、『CITY CONNECTION 』はそれを踏まえた上でのキャッチーなニューヨーク・フュージョンへのアプローチだった。

アレンジはハリー・ウィタカーとレオン・ペンダーヴィス。共にロバータ・フラックのブレーンとして知られる黒人キーボード奏者/アレンジャーで、特にウィタカーはロイ・エアーズ・ユビクティでも活躍していた。日本制作で出したブラック・ルネッサンス名義のリーダー作『BODY, MIND & SPIRIT』(76年)も、ピリチュアル・ジャズの傑作として近年再評価されている。彼らの下に集ったバック・メンバーは、デヴィッド・リーブマン(sax)、デヴィッド・スピノザ(g)にアンソニー・ジャクソン(b)、ハワード・キング(ds)、そして後にパット・メセニー・グループで名を上げるナナ・ヴァスコンセロス(perc)。

黒人アレンジャーに楽曲を委ねたためか、改めて聴くとアーバン・ソウル色濃厚な仕上がり。でも新たにメイン楽器としたコルネットとの相性はバッチリで、特に<Send Me Your Feelings>、ハンド・クラップも印象的な<Samba De – La Cruz>は、フロア・フレンドリーなグルーヴ・チューンとして輝きを放つ。もちろんタイトル曲は、ウイスキーのTV-CMソングとしてお茶の間に流れた。

ナベサダやネイティヴ・サンなどと同様、インスト・フュージョン作が20万枚超も売れたというのだがら、ホントに良い時代である。でもそれが今またフレッシュに聴けるというのも、時の巡り合わせの妙、なのかな?