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昨日付けでご紹介した羽根田征子と同様、この2枚もタワーレコードとソニーミュージックショップ限定発売。一度『COMPLETE ALFA YEARS』という2枚組で再発されたが、それも05年のことだから もう11年前…、って信じられまへん いずれにせよ、アルバム単体でのCD化は今回が初めて。それにシングル楽曲なり何なりのボーナス・トラックを追加する、ってぇのが、やっぱりカタログ再発の王道ってモンでしょう。もちろん新規リマスターで高品質Blu-spec CD2仕様。

この桐ヶ谷仁は、ポプコン出身のシンガー・ソングライター。といってもコンペに応募したのではなく、ヤマハ側スタッフの作曲家サークルに参加してデモ制作をしていたところを、創設間もないアルファから声が掛かって、男性ソロ・アーティストの契約第1号となった。レーベル内もとても良いムードに包まれていて、1stアルバム『MY LOVE FOR YOU』(79年)のレコーディングには充分な時間と予算が与えられたとか。トップの村井邦彦の関係だろう、スタジオにはかのアル・シュミットが姿を見せ、アドヴァイスなど貰ったらしい。何でもヴォーカルの歌入れは、マイケル・フランクスと同じ方法で録ったのだとか。

プロデュースは有賀恒夫。そして松任谷正隆、坂本龍一、佐藤博という3人のアレンジの下、細野晴臣/高水健司/小原 礼(b)、高橋幸宏/林立夫(ds)、鈴木茂/松原正樹/今 剛(g)、深町 純(kyd)といった、ティン・パン〜YMO人脈周辺のトップ・プレーヤー連中が参加している。

アマチュア時代にノビノビ作った楽曲が多数収められているため、当人の思い入れが一番強いアルバムだそうだが、元々がフォーク系のシンガー・ソングライターなので、後年のようなシティ・ポップス度は低く。一方でボサノヴァの影響もあったから、テイストは洗練されていて洋楽っぽい。でもムードはやっぱりウェットで、ミディアム〜スロウ系の楽曲が多く並んでいる。総じて言えば、 “メロウ・フォーク”といった感じだろうか。「+1」は、<Unhappy Day>のシングル・ヴァージョン。

2ndアルバム『WINDY』は、81年のリリース。ヨーグルトのイメージ・ソングとなった<遠い日のときめき>がスマッシュ・ヒットしたことから、「リズム感を前面に押し出して、ポップでカッコいいもの」を目指したそう。ある意味、イイ内容なのにチョッと地味だった前作の反省もあったに違いない。アレンジは松原正樹と連続登板の松任谷。松っつぁんは同じアルファ所属となったブレッド&バター『PACIFIC』のプロデュースと同時進行で、参加メンバーなど共通点が多いという。主なところでは、林立夫、マイク・ダン、斉藤ノブのパラシュート勢に、高水健司/後藤次利 (b)、佐藤準/清水信之/難波弘之(kyd)、山本潤子/EPO/広谷順子(cho)など。

以前のインタビューでは、「1枚目がマイケル・フランクスなら、2枚目はもう少しロック色のあるAOR」と語っていて、ボズ・スキャッグス、ロビー・デュプリー、スティーリー・ダン、ビル・チャンプリンなどを挙げている。でも今じゃAOR度満点の後続作『VERMILLION』(84年)を知ってるワケで、やはりメロウ・フォークっぽさを感じてしまうところ。松っつぁん編曲は確かに当人の仰る通りだが、マンタさん編曲は前作踏襲。でも当人は両方好きだそうだから、この辺のバランスがEMI移籍後の2作『JIN』(松任谷編曲)と『VERMILLION』(椎名和夫編曲/達郎バンド全面参加)に展開していくのだろう。

「+3」は、<遠い日のときめき>のシングル・ヴァージョンと、そのB面曲で『COMPLETE ALFA YEARS』にも収録されていたアルバム未収の<サマー・サンセット>、そしてレアな<遠い日のときめき>のCMヴァージョン。

マニアは、悩んだら買っとく! のが鉄則です。

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