カナザワが以前から関係筋にCD化を推していたジャズ・シンガー:大野えり。オンデマンドのCD-R盤が出ていたのでなかなか実現しなかったが、所属したコロムビア傘下のレーベル:ベター・デイズの再評価と共に、ようやく復刻が実現。中には和ジャズ・クラシックとしてディスク・ガイドに取り上げられたり、人気DJ:沖野修也がコンピに収めた楽曲/アルバムもあるので、結果的になかなか良いタイミングになったと思う。
プロジェクトとしては、デビュー以来のベター・デイズ6作に社内移籍したインターフェイスでの1作を加えた計7作を、12月と来年1月の2回でリイシュー。まずは今週21日に、佐藤允彦アレンジによる79年のデビュー作『TOUCH MY MIND』、杉本喜代志アレンジで清水靖晃、笹路正徳、益田幹夫、山木秀夫、岡沢章、高水健司といった錚々たる面々が参加した2作目『FEELING YOUR LOVE』、そしてこの3rdアルバム『eri』(80年)が発売される。ライナーは最初の2枚はアドリブ元編集長の“ジャコ” 松下さん、そして『eri』がカナザワ。オンデマンド以外では3作とも初CD化だ。
この時期、日本のジャズ・フュージョン・シーンでは、阿川泰子や中本マリなどを中心とするジャズ・ヴォーカル・ブームの波が来ていた。ただし、女優上がりで “ネクタイ族のアイドル” として人気を得た阿川、ジャズ界でそれなりのキャリアを積み上げてきた中本と、若き本格派として登場した えり嬢とでは、少しスタンスが違ったと思う。オーセンティックなスキルだけでなく、R&Bカヴァーもソウルフルに歌いこなすクロスオーヴァー感覚を持っていたからだ。それはデビュー盤で既に、笠井紀美子が歌っていたハービー・ハンコック<Butterfly>、パティ・オースティンとクインシー・ジョーンズらの共作曲を歌っていたことから明白。2作目『FEELING YOUR LOVE』ではスティーヴィー・ワンダー、ルーファス、ディオンヌ・ワーウィック、フィリス・ハイマンなど、ソウル〜ポップス・カヴァーを増やして、更なる進化を露わにした。
かくしてこの3作目『eri』である。当然ソウル〜ポップス色は濃くなり、マイケル・ジャクソンが歌ったスティーヴィー作品<I Can’t Help It>、ハンコック<Trust Me>、キャロル・ベイヤー・セイガーのソロ作に入っていた<Sweet Alibis>、ザ・スタイリスティックス<People Make The World Go Round>、ルーファス&チャカ・カーン<Best Of Your Heart>などをピックアップ。だがココでのハイライトは、初めてオリジナル楽曲に挑戦し、作詞にも手を染めたことだ。
そこで重要なのが、前作に参加したピアノ奏者:大徳俊幸である。大徳はジョージ大塚クインテットで頭角を現した人で、76年に初リーダー作『SNAPDRAGON』を発表。本作ではオリジナル4曲中3曲を作曲し、アルバム全体のプロデュース/アレンジを担った。彼とえり嬢が如何に良いコンビネーションだったかは、それが “グッド・クエスチョン”というバンドに発展したことからも伝わってくる。他のコア・メンバーは、パラシュートのマイク・ダン(b)、峰厚介グループ出身のハイ・メイカン(g)、大徳が米軍キャンプで見つけたジェリー・エディ(ds)。これに杉本喜代志、清水靖晃、向井滋春、荒川バンドの荒川達彦、グッド・クエスチョンの一員となる作山功二らがアディショナルで参加した。
ポップ・カヴァーが多くなったと言っても、そこはジャズ・ディーヴァ作品らしく、クロスオーヴァー色豊か。例えばパティ・オースティンで言うなら、クインシー制作のクエスト作品より、その前のCTI期に近い。今になってクラブ方面で再評価されるのも、ジャズ・シンガーの矜持をシッカリと持っていたからと言える。そうした えり嬢の実力の高さとキャパシティの広さをバランスよく表現したのが、この3作目。今回の再発群から、まず何か1枚という方には、うってつけの1枚だ。
この時期、日本のジャズ・フュージョン・シーンでは、阿川泰子や中本マリなどを中心とするジャズ・ヴォーカル・ブームの波が来ていた。ただし、女優上がりで “ネクタイ族のアイドル” として人気を得た阿川、ジャズ界でそれなりのキャリアを積み上げてきた中本と、若き本格派として登場した えり嬢とでは、少しスタンスが違ったと思う。オーセンティックなスキルだけでなく、R&Bカヴァーもソウルフルに歌いこなすクロスオーヴァー感覚を持っていたからだ。それはデビュー盤で既に、笠井紀美子が歌っていたハービー・ハンコック<Butterfly>、パティ・オースティンとクインシー・ジョーンズらの共作曲を歌っていたことから明白。2作目『FEELING YOUR LOVE』ではスティーヴィー・ワンダー、ルーファス、ディオンヌ・ワーウィック、フィリス・ハイマンなど、ソウル〜ポップス・カヴァーを増やして、更なる進化を露わにした。
かくしてこの3作目『eri』である。当然ソウル〜ポップス色は濃くなり、マイケル・ジャクソンが歌ったスティーヴィー作品<I Can’t Help It>、ハンコック<Trust Me>、キャロル・ベイヤー・セイガーのソロ作に入っていた<Sweet Alibis>、ザ・スタイリスティックス<People Make The World Go Round>、ルーファス&チャカ・カーン<Best Of Your Heart>などをピックアップ。だがココでのハイライトは、初めてオリジナル楽曲に挑戦し、作詞にも手を染めたことだ。
そこで重要なのが、前作に参加したピアノ奏者:大徳俊幸である。大徳はジョージ大塚クインテットで頭角を現した人で、76年に初リーダー作『SNAPDRAGON』を発表。本作ではオリジナル4曲中3曲を作曲し、アルバム全体のプロデュース/アレンジを担った。彼とえり嬢が如何に良いコンビネーションだったかは、それが “グッド・クエスチョン”というバンドに発展したことからも伝わってくる。他のコア・メンバーは、パラシュートのマイク・ダン(b)、峰厚介グループ出身のハイ・メイカン(g)、大徳が米軍キャンプで見つけたジェリー・エディ(ds)。これに杉本喜代志、清水靖晃、向井滋春、荒川バンドの荒川達彦、グッド・クエスチョンの一員となる作山功二らがアディショナルで参加した。
ポップ・カヴァーが多くなったと言っても、そこはジャズ・ディーヴァ作品らしく、クロスオーヴァー色豊か。例えばパティ・オースティンで言うなら、クインシー制作のクエスト作品より、その前のCTI期に近い。今になってクラブ方面で再評価されるのも、ジャズ・シンガーの矜持をシッカリと持っていたからと言える。そうした えり嬢の実力の高さとキャパシティの広さをバランスよく表現したのが、この3作目。今回の再発群から、まず何か1枚という方には、うってつけの1枚だ。