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いよいよ明日29日、タワーレコード限定で、黒住憲五の初期名盤『AGAIN』(1st / 82年)と『STILL』(2nd / 83年)がアナログ・レコードで再発される。監修・解説はワタクシ、金澤寿和。一昨年あたり、シティ・ポップス系の初CD化プロジェクトとして Tower to the People × Light Mellow's Picks シリーズを推進させていたが、それが久々に復活した格好だ。

事情通であれば御存知かと思うが、この2作は元々自分がヴィヴィド・サウンドで展開している【Light Mellow's Choice】で、09年に初CD化したものだ。あの時はシングルのみの楽曲をボーナス収録するなどしてプライオリティを高めたが、如何せん、音質の面で物足りなさが残った。というのも、80年代初めに黒住さんが所属していたTDKコアは早々に音楽制作部門を閉鎖してしまい、マルチ・マスターは行方不明に。当時のディレクター氏が管理していたサブ・マスターを一部で使用できたものの、大半はアナログ盤起こしのCD化となってしまった。

カタログ再発が日常的に行われるようになった今、マスターテープの保存状態は大きな問題になりつつある。海外マイナー・レーベルの発掘ネタであれば、マスターが見つからない、紛失した、なんて当たり前。メジャー・レーベル作品でシッカリ保管されたマスターテープでも、テープ自体の保存性、劣化が深刻になっている。繰り返し繰り返し音を拾われたアナログ・マスターなら、音が痩せたり飛んでしまっても不思議はない。

そこにひとつの風穴を開けたのが、角松敏生『SEA BREEZE 2016』だ。エルプ社製のレーザーターンテーブルの音の素晴らしさに触れた彼は、古いマスターテープをデジタル・リマスタリングしてCDを復刻するのではなく、敢えてレーザーターンテーブル起こしの復刻版を作った。それが『SEA BREEZE 2016』の初回限定盤ディスク2。これがかなり評判が良かった。ヒス・ノイスが発生せず、原音に極めて忠実な再生。アナログ盤発売の際は、レコード会社の判断で何故か通常マスターが使用されたそうだが、アナログ盤にこそレーザーターンテーブル起こしのマスターを使うべきだった、という声は根強い。

そこでAORやシティポップスのカタログ再発に多く関わり、尚かつエルプさんとも良いお付き合いをさせて戴いているカナザワが、この手法をシステマチックに再構築して盤起こしのスタンダードにしましょう!と提案。Laser Vinyl master(通称LVm)が立ち上がった。その第1弾となるのが、この黒住憲五『AGAIN』『STILL』である。

  [LVm]はアナログレコード盤をレーザーターンテーブルで
  光再生し、より原音に近い音質でアーカイヴされた
  「マスター音源」です。


ちなみにレーザーターンテーブル自体は20年以上前から存在しており、一部オーディオ・ファンなどには古くから知られた存在。でも完成度が飛躍的に高まったのは最近のモデルからで、専用フォノイコライザーの開発により、Laser Vinyl masterの方法が可能になったそうだ。

なので、従来CDよりも今回の再発アナログ盤の方がはるかに聴きやすく、耳馴染みが良い。それどころか、当時のLPとのアナログ盤同士を聴き比べでもまったく遜色ないというか、むしろ再発盤の方がダイナミクスに勝る感さえある。この辺りは、それぞれのマスターから音を引き出すエンジニアの手腕にも拠るのだろう。

サウンド的には、山下達郎〜角松敏生系のアーバン・ポップス支持派には間違いのないトコロ。『AGAIN』は故・松原正樹のサウンド・プロデュース。『STILL』は黒住セルフ・プロデュースの下、松っつぁん、三枝成章、まだ駆け出しだった武部聡志がアレンジを分け合っている。当然バックはパラシュートの面々を中心とする一流どころで、2ndにはCharも参加していた。まさに小粋なアーバン・サウンドが堪能できる。

なお来月26日には、89年のL.A.録音作『PILLOW TALK』が復刻。これはマスターテープが良い状態で存在するため、LVmではなく通常マスターになるが、何せ初めてアナログ化なのでマニア垂涎だろう。そして翌日27日には、レコ発記念ライヴも企画されている。

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 ★4/27(thu) SPARKLING☆NIGHT ~黒住憲五レコ発記念SPECIAL〜 @下北沢440
     feat.黒住憲五 guest.丹波博幸(gt.)
     19:00open/ 19:30start  adv y3000/ day y3500


再発盤のお求めは、以下から。
『AGAIN』
『STILL』
『PILLOW TALK』(4月26日発売)

なお、LVmは現在、次のプロジェクトが進行中。導入を検討しているレーベルも出てきているので、徐々に広まっていくだろう。