yocht rock_du

少し前にミュージックマガジンのヨット・ロック特集に寄稿し、こちらの記事をアップした。その後、DU BOOKから刊行された『ヨット・ロック』本をジックリ読んで、このヨット・ロックなるシロモノについて、更なるトコロが見えてきた。看板とか定義なんてどうでもイイぢゃん、という声も少なからずありそうだが、それには半ば同意しつつ、でもそのあたりの蘊蓄を語るのが自分の役割でもあるので…

見えてきたのは、新しく生まれたヨット・ロックという言葉でさえ、早くも国や世代によってイメージが乖離してきていること。本に登場するアーティストでも、懐古主義な懐メロだ!と否定的な意見もあれば、ヨット・ロック・ブームで復活できたと喜ぶ者もいる。若い世代に広まりつつあるのも確かだろうが、USでの若手アーティストの登場は、メイヤー・ホーンソンと彼の所属するレーベル:Stone Throw 界隈ぐらい。ネッド・ドヒニー『PRIVATE OCEAN』を出した Nuremo は US のレーベルだが、そのネッドが改めて注目されたのは英国だった。

ヨット・ロック本の解説やマガジン特集に出てきたニュー・カマーたちも、多くは UK/EU ないしはブラジル勢で、しかも宅録系やインディ・ロック志向だったりする。言い換えれば、音楽性も演奏スキルも、当時のAOR勢の足元には遠く及ばないワケ。そもそも、ヨットに乗って聴くのがキモチ良いはずなので、それが宅録系とかインドア派って何なのよ

フリートウッド・マックやブレッド、キャプテン&テニール、CSN&Yあたりまで入ってくるのは、ヨット・ロックならではの新鮮な動きだと思う。でもそちらに寄り過ぎれば、どうしたってノスタルジックになってしまう。だからそこは、ジョン・メイヤーやジャック・ジョンソンあたりでバランスを取るべき。ベニー・シングスやトム・ミッシュなんかより、彼らの音の方がはるかにヨット・ロック的だと思う。

それに、ヨットだからと言って、心地良さのイメージ先行で語ろうとするのは、かつて「AORがダサイ」と言われた頃と同じ轍を踏むことになリかねない。若い世代を巻き込むなら、ダサ帯じゃないが、憧憬とシニカルな視線を同居させるのが、ヨット・ロックの極意ではないか。日本でオッサンたちが語るヨット・ロックは、懐メロかインディ・ロック、どちらかに振れ過ぎだな。