カナザワも執筆参加しているレコードコレクターズ誌増刊『シティポップ』が好評を呼んでいるが、それを追うようにして、もう一冊の和モノ・ディスクガイドが刊行された。それが『WA B.O.O.G.I.E.』。キャッチコピーは、『2010s感覚の1980s法学キキミミ=和ブギー』というもの。言ってしまえば、シティポップの流れを汲む和モノの中から、クロいグルーヴを持つファンクやモダン・ソウル、フュージョンだけを700曲抽出した、フロア・ユースのガイドブックである。アートワークはナンと、巨匠:永井博さん!
中をめくるとセレクトは完全に楽曲単位。掲載がアルバム・ジャケット多数で少々混同しがちながら、ブギーに特化したガイドだからシングル曲は少なく、ある意味当然のフォーマットである。そこはリコメンド・トラックを対象化した我らが『Light Mellow 和モノ』を、今の感覚で更に深化させた感覚。クロスオーヴァー〜フュージョンにも手厚いから、自ずと掲載楽曲は被ってくる。でも「蛇の道は蛇」。スタイルを狭く絞り込んでいる分、奥の細道に分け入って行く感じが楽しく、面白い。
また和モノの先行類書にあったサブカル感、レア盤優先の傾向もあまり強くなくて、CDであれアナログであれ、頑張ればゲットできそうなタマが多い点も好感。コレクターやバイヤー主導のディスクガイドって、“買うため、探すための手引き” という大義をおざなりにして、ほとんど手に入らない激レア盤自慢に陥る例が少なくない。もちろん上級者向けや意表を突くような提案ネタは必要だし、それをキッカケに復刻が動くこともある。でもそれも全体のバランスの中で程度を弁えて載せていかないと、イヤらしい仕上がりになってしまう。自分は音楽ライター、つまり紹介者としての立場でモノを書きガイド本を監修してきたから、そういうスタンスは「違うだろ〜ッ」と気になってしまうのだ。本書執筆陣も、中古盤バイヤーやDJ諸氏が多いから、きっとそういう危険が背中合わせだったはず。でも本書スタッフには全体をプロデュースする目利きが居たようで、程よいバランス感に優れている。例えば、ロック名盤100選みたいなスタンダードな本が何度も何度も繰り返し発行されるのは、いつの時代もベーシックなディスクガイドへのニーズが無くならない証明なのだ。
ただし執筆陣がDJ感覚でしか聴いていないのか、斜め読みした限りでもトンチンカンな記述があったり、帯付き・帯ナシのジャケが混在していて統一感に乏しかったり、あるいはアーティスト索引がないなど、少々残念なところも。永井さんにアートワークを頼むなら、他でももっと完成度を高める余地があったと思う。自分も何冊ものガイド本を作ってきたから、「かくあるべし!」というのがハッキリしている分、どうしたって厳しい目で見てしまうのよ
一方で、韓国の和モノ・ディガー:Night Tempo にインタビューしているのは、ヴェイパー・ウェイヴの流れを考えれば実に的確。同じ人選をしていたコレクターズ増刊以上に フィット感アリだ。増刊号がコレクターズ本体のシティポップ特集から更に口を広げていたのに対し、逆にネタの時代感とスタイルを絞り切った『WA B.O.O.G.I.E.』では、向いてる方向が正反対と言える。その分、ブギーもの偏重のリスナー/コレクターには、読みがいのある一冊になるのは間違いない。
我々が15年前に最初の『Light Mellow 和モノ』を出した時は、和モノのDjイベントなんて存在しなかった。それが今や、週末の都内ではアチコチで開催されている有り様。ビックリというか、感慨深いというか… もちろんそういうところに群がる皆さんには、まさに必携の書です。
また和モノの先行類書にあったサブカル感、レア盤優先の傾向もあまり強くなくて、CDであれアナログであれ、頑張ればゲットできそうなタマが多い点も好感。コレクターやバイヤー主導のディスクガイドって、“買うため、探すための手引き” という大義をおざなりにして、ほとんど手に入らない激レア盤自慢に陥る例が少なくない。もちろん上級者向けや意表を突くような提案ネタは必要だし、それをキッカケに復刻が動くこともある。でもそれも全体のバランスの中で程度を弁えて載せていかないと、イヤらしい仕上がりになってしまう。自分は音楽ライター、つまり紹介者としての立場でモノを書きガイド本を監修してきたから、そういうスタンスは「違うだろ〜ッ」と気になってしまうのだ。本書執筆陣も、中古盤バイヤーやDJ諸氏が多いから、きっとそういう危険が背中合わせだったはず。でも本書スタッフには全体をプロデュースする目利きが居たようで、程よいバランス感に優れている。例えば、ロック名盤100選みたいなスタンダードな本が何度も何度も繰り返し発行されるのは、いつの時代もベーシックなディスクガイドへのニーズが無くならない証明なのだ。
ただし執筆陣がDJ感覚でしか聴いていないのか、斜め読みした限りでもトンチンカンな記述があったり、帯付き・帯ナシのジャケが混在していて統一感に乏しかったり、あるいはアーティスト索引がないなど、少々残念なところも。永井さんにアートワークを頼むなら、他でももっと完成度を高める余地があったと思う。自分も何冊ものガイド本を作ってきたから、「かくあるべし!」というのがハッキリしている分、どうしたって厳しい目で見てしまうのよ
一方で、韓国の和モノ・ディガー:Night Tempo にインタビューしているのは、ヴェイパー・ウェイヴの流れを考えれば実に的確。同じ人選をしていたコレクターズ増刊以上に フィット感アリだ。増刊号がコレクターズ本体のシティポップ特集から更に口を広げていたのに対し、逆にネタの時代感とスタイルを絞り切った『WA B.O.O.G.I.E.』では、向いてる方向が正反対と言える。その分、ブギーもの偏重のリスナー/コレクターには、読みがいのある一冊になるのは間違いない。
我々が15年前に最初の『Light Mellow 和モノ』を出した時は、和モノのDjイベントなんて存在しなかった。それが今や、週末の都内ではアチコチで開催されている有り様。ビックリというか、感慨深いというか… もちろんそういうところに群がる皆さんには、まさに必携の書です。