richard natto tourrichard natto live 2

いつもは濱田金吾さんなど和モノのライヴを観に行く小振りなライヴ・ハウス Back In Townで、コンテンポラリー・ハワイアンのリチャード・ナット、アコースティック・ツアー東京公演。赤ちゃんのカワイイお尻ジャケットで知られる人だけれど、このジャパン・ツアー中に弾き語りによる新録のカヴァー・アルバム『UNPAINTED FACE 1/2』と『UNPAINTED FACE 2/2』が2枚同時発売。そこにカナザワが推薦コメントを書かせてもらっている(アルバム紹介はコチラから)。 併せて 09年発表の4thアルバムにクリスマス・ソング2曲を追加収録し、アートワークも一新した『LETS MAKE MUSIC AGAIN』を同時発売。AORやコンテンポラリー・ハワイアン好きには、今 ちょっとしたリチャード・ナット祭りの体(テイ)になっているのだ。

しっかしこのリチャードさん、まったくもって自由だわぁ〜 ギターの弾き語りなのでステージ上にはスツールが用意されているけれど、落ち着いて座っていることなどない。深めに腰掛けてシットリと歌い始めても、2コーラス目に入るあたりでスックと立ち上がり、ロックン・ローラーのように大きなジャスチャーを交えて歌う。ヘッドマイクだからこそ成せる技だが、この人の場合はギターのボディを拳で小突いたり、弦を掌で叩いたりして、まるでギターをオモチャのようにアクロバティックに扱うのだ。そして興が乗ると、片足を上げてエア・キックしたり、MCでコーラ片手に鼻唄を歌うなど、どこか芸人的でも。とにかく片時もジッとして歌うことなく、その動きでいつの間にかオーデュエンスの心を鷲掴みにしてしまう。きっとハワイのホテルのランジあたりで、観光にやってきた酔客相手に歌を歌い続けてきた経験が、こうしたユニークなステージングの礎になっているのだろう。

アルバムを聴けば分かるように、声はなかなかに美しく、レンジもかなり広い。ギター・テクニックも一流だから、きっとケニー・ランキンのように崇高な歌だって歌えるはずだ。でもリチャートの歌は芸術というより、まずはエンタテイメント。客席を喜ばせてナンボ、という精神が働いている。だから動き回り過ぎてピッチは狂うし、声がカスレたり引っ繰り返るのも頻繁だ。でもそれを気にすることは一切なく、あっても「やっちまったヨ」と笑ってゴマかすのがオチ。そもそも上手く歌おうなんてコレっぽっちも思ってなくて、サァ、みんなで楽しみましょうというスタンスなのだ。キャイ〜ン天野をゴリラ顔にしたようなイカツさだけど、豊かな表情で屈託なく笑うリチャードには、誰もが楽しい気分にさせられる。オーディエンスにコーラスを取らせる場面では、自分はギターを置いて客席に降りてハンドクラップ、たまたまそこにいたお店のお姐チャンを捕まえてダンスを踊る場面も…

そんなだから、セットリストさえも、あってないようなもの。開演前に以下のようなリストを見せてもらっていたが、そのままの順番で歌われたのは、オープニングのジノ・ヴァネリだけだろう。数曲目に登場したビートルズ<Here There And Everywhere>は、<I Should Have Known Better(恋する二人)><Rain>と続いて壮大なメドレーになっていたし、2nd 中盤でも<Blackbird><Lucy In The Sky With The Diamonds><Elenor Rigby>というビートルズ・メドレーが登場した。ノンストップではなかったけど、彼が敬愛するスティーヴン・ビショップ2連発<Saving It For A Rainy Day><Bish’s Hidaway>は1st 後半で。リチャード自身MCで、「<Bish’s Hidaway>はマイ・フェイヴァリットのひとつ」と話していたな。その前後に、「ロッド・スチュワートの『ATLANTIC CROSSING』から」と言って歌い出したのが<This Old Heart Of Mine>。オリジナルはアイズレー・ブラザーズ。リチャード版は再発盤『LETS MAKE MUSIC AGAIN』に収録されている。マニアが喜んだのが、未だリイシューされないトマ/ナットの1st『ZOOMIN' AWAY』収録のタイトル曲や<Domestic Lady>あたり。リストにはないけど、<Lia>も演ったかな? 「亡くなった父親に…」と言って歌ったダン・フォーゲルバーグ<Leader Of The Band>が滲みました。

ジェイムス・テイラー<Don't Let Me Be Lonely Tonight>でスタートした2nd Showは、<Daydream Beliver><Reminiscing>、そしてプレスリー<That's All Right>、ビーチ・ボーイズ<Wouldn't It Be Nice (素敵じゃないか)>、デイヴ・クラーク・ファイヴ<Because>など、1st で歌わなかったリスト楽曲を総ざらえの様相。1st は気の向くまま自由に歌っているので、どうやら自分でも歌った曲順などは把握していないようだ。それを2ndではリストを確認しながら、まだ歌っていない曲をピックアップして披露していく。他にも2枚の『UNPAINTED FACE』に入っていたスタンダード<Can't Help Falling In Love>、ビー・ジーズの曲でアル・グリーンでも知られる<How Can You Mend a Broken Heart (傷心の日々)などを歌った。

弾き語りではあるが要所要所でルーパーを巧みに使い、ギター・ソロを披露する。とにかくワンマン・ライヴとは思えぬ賑やかさで、飽きさせないどころか、完全に観せて魅せるショウになっているからスゴイ。ステージに掛けられたナンバーは、『UNPAINTED FACE』2枚からの楽曲が多かったれど、それを聴いて分かったような気になってたら大間違いだ。“百聞は一見にしかず” とは、まさにこのコト。音楽ファン歴45年超のカナザワでさえ、これだけ面白い弾き語りショウを観たのは初めてだった。

ジャパン・ツアーの前半は既に終了したが、下記掲載のフライヤー通り、この後大阪でライヴがあり、月末にはまた東京へ戻ってきて最終公演がある。まさに見逃し絶対禁止。加えて大阪でも、東京と同じようにインストア・ライヴが予定されていると聞く。かくいうカナザワも もう一回観ておきたいと思って、東京最終日のスケジュールを調整しようと思っているところだ。

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※このライヴ写真はBack In Townのモノではありません


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