leon ware_rainbow deux

アジムス&マルコス・ヴァーリのショウに感化されたか、今日も遠巻きにマルコス関連。17年2月に亡くなったリオン・ウェアの、遺作とも言える新作リリース『RAINBOW DEUX』のアナログ盤インナーに、リオンとマルコスが共作した<Depper Than Love>の歌詞が、思い入れタップリに掲載されていたのが、とっても印象的だったのだ。何故ならこの曲は、名盤とされる82年作『LEON WARE(夜の恋人たち) 』の収録曲であって、歌詞を載せている最新作『RAINBOW DEUX』には未収。しかも本来載せるべき新作収録曲の歌詞などは、何故かどこにも載ってない。

カナザワが手にしたのは、12曲が収められた米Be With Lebel 発のアナログ2枚組。ただしそのうち半数の6曲は、日本限定で14年にリリースされた『SIGH』で既発表である。そこから3曲を外し、代わりにリオンが体調を崩すまでレコーディングしていた6曲を追加・差替えたのが、このアルバムだ。

『SIGH』はサンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー(b)とロナルド・ブルーナー(ds)兄弟、サックスのカマシ・ワシントン、それに本作プロデューサーでもあるテイラー・グレイヴス(kyd)などのブレインフィーダー/フライング・ロータス一派の参加により、先物買いの音楽ファンの間で話題になった(他にもフレディ・ワシントン、ウェイン・リンゼイ、ドウェイン・スミッティ・スミスらが参加)アルバム。今作リリースに際しても、14年の時点でこのメンバーを起用するとはオドロキ、という声が上がっているらしい。でも実際のところ、リオンが彼らの参加するバンド:ザ・ヤング・ジャズ・ジャイアンツに目をつけたのは、それを遡ること12年以上前。リオンの02年初来日ツアー(東京飛ばして大阪・福岡のみ!)のバック・バンドに、早くもブルーナー兄妹とテイラー・グレイヴスが在籍していたというから、その慧眼と先取り感覚には心底ビックリさせられる。

新録6曲は録音時期こそ不明ながら、16年8月頃、レオンと彼のお気に入りの英国人エンジニア:トニ・エコノミデスの間で仕上げられたもの。『SIGH』から外されたのがレゲエやアンビエント感覚の濃いもの、80's的ダンサーといった個性の際立つ楽曲ばかりなので、結果的に『SIGH』の根幹を成したトラックがそのまま本作に移動し、その延長にある未発表アーバン・メロウ・チューンばかりを選りすぐってコレにまとめたのだろう。その中には、ゴティエとのデュエットで注目されたニュージーランドの女性シンガー:キンブラが参加した甘美な<We Should Be Laughin'>もあるから、またまたビックリ

00年代以降、60歳代になって逆にソロ活動を活発化させたリオンであるが、メロウ大王との異名をとるようになる一方で、代表曲に挙げられるようなキラー・チューンは生まれず、アルバム全体の雰囲気でリスナーを包み込んでしまう傾向が強くなった。もともと歌ヂカラで聴き手をねじ伏せるコトなどできない人だが、それでも遠くで鳴るトランペットが印象的な近年のライヴ定番<Are You Ready>、 G-Funkっぽい<Streets(Keep Me Runnin')>、めくるめくヴォイス・タペストリーに酔わさせる<Let's Go Deep>など、耳にこびりつく楽曲多数。『SIGH』以降の制作曲は、マジ、82年作以来のデキと言えるかも。

しかも、歌詞が載っているのはマルコスとの<Depper Than Love>だけでなく、今年1月に亡くなったジェイムス・イングラムとの共作<Everlast>も(ジェイムスの生前最後のアルバム 08年『STAND (IN THE LIGHT)』所収)。そのほか、デヴィッド・ペイチやリチャード・ルドルフ、ドン・グルーシン、ケヴ・モーなど、リオンゆかりの顔ぶれがコメントを寄せ、親族と思しき女性たちの解説やポエムもある。見開きゲートホールド・ジャケット前面を飾るのは、海辺で仲良く手を繋いで日光浴するハート印たち。このリオン自らが描いた絵のタイトル『DEUX HEARTS(ふたつの心)』が、アルバム・タイトルの元になったのは間違いない。それくらい、制作スタッフのリオン愛が溢れちゃってる作品なのだ。

どうやら現時点ではCD発売の予定はないようで、配信とストリーミンングのデジタル・リリースと、カナザワが購入した2枚組アナログ盤のみのリリース。しかしこの熱の籠ったパッケージを見ると、普段聴きはともかく、フィジカルが手元にないと この作品に触れる意味がない と思ってしまう。結局のところ、それがこれからの音楽マーケットの在り方、つまり垂れ流しの音楽で満足できるならデジタル、メッセージなりヴィジュアルなりコミュニケーションなり音楽に何らかのプラス・アルファを求めるならレコードやCDで、というところに収斂していくのではないかな?



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