roger waters_us+thempink floyd perfect live

ロジャー・ウォーターズ『US + THEM』と本家ピンク・フロイドの『光〜PERFECT LIVE!(2019リマスター)』の映像版。共にこの11月末に一夜限定のプレミア上映があるので、チケットを買って観に行く予定にしていたら、運良くマスコミ向けのダブル試写会にお誘い戴いたので、そそくさと市ヶ谷六番町のソニーへ。先日から風邪をひいてしまい、少し頭がボーッとしていたが、どちらも圧巻の映像スペクタクルにドップリ引き込まれ、それぞれ約2時間、時が経つのも忘れて完全に見入ってしまった。

最初に観たのは、この30日(土)にプレミア上映されるロジャー・ウォーターズ『US + THEM』。2017〜18年のワールド・ツアーからオランダ・アムステルダム4公演をシュートし、それを選りすぐって構成している。フロイドの頭脳、イデオロギーの源とされるロジャーゆえ、その内容は社会性や政治色が強いモノだが、その前に超一級のエンターテイメント・ショウとして成立しており、だからこそオーディエンスがそのメッセージに耳を傾けたり、自らの立場を考える契機となるのだろう。

プレイされている楽曲も、『DARK SIDE OF THE MOON(狂気)』『WISH YOU WERE HERE(炎〜あなたがここにいてほしい)『ANIMALS』『THE WALL』といったフロイド時代のアルバム代表曲ばかりで、ソロ曲は25年ぶりに発表した最新作『IS THIS THE LIFE WE REALLY WANT?』から少しだけ。既にどれも40年以上も前の作品なのに、音楽的にだけでなく、今も有効な社会的メッセージを発している事実に気づかされ、人間の根源的欲深さに陰惨な思いを抱いてしまう。テクノロジーが如何に進化しようとも、人間の愚かしさは何も変わらないのだ。

フロイドやデイヴ・ギルモアの映像作品を観ている身では、序盤はほぼ想定内の滑り出しで、「SNSでの煽りがスゴかった割には…」と思っていたが、覆面姿の子供たちが登場する<Another Brick In The Wall>あたりから急にエンジンが吹かされ、アリーナ席の頭上中央に『ANIMALS』のジャケであるバタシー発電所を模した巨大オブジェが登場。4本の煙突から煙を燻らせながら、両壁面をスクーリン化して、インパクトのある映像を映し出す。演奏は当然『ANIMALS』から<Dogs>と<Pigs>。この辺りがこのライヴのハイライトと言えるだろうか。そのまま『狂気』から<Money>などの著名曲連発で、ショウは幕切れとなる。

世界で230万人を動員したといいつつ日本公演は実現しなかったこのツアーだが、今回の映像を見れば、これだけのセットは巨大アリーナ・クラスでないと入り切らず、日本がスルーされてしまったのも合点が行く。プレミア上演は既に売り切れ状態のところが多いらしいが、フロイド・ファン、プログレ好きなら絶対に観ておくべきだろう。

“『US +THEM』は行動への呼びかけ。愛と人生への投票なんだ。人類は今まさに岐路に立たされている”(ロジャー・ウォーターズ)
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しばしの休憩時間を挟んでの試写2本目『DELICATE SOUND OF THUNDER / 光〜PERFECT LIVE!』は、『鬱(A Momentary Lapse Of Reason)』発表後の88年ワールド・ツアーの模様を収録したライヴ映像。実はVHSで持っているが、未だDVDにはなっていないので(ブラジルで出るもイリーガルという噂)、個人的に復刻を心待ちにしてきた作品だ。このツアーでの来日を代々木競技場で観たのがカナザワの初ナマ・フロイドで、その圧倒的な光量とステージングに強かに打ちのめされ、今も生涯ベスト3に入るライヴ体験となっている(あとはエアロスミス、TOTO、ジェネシスそれぞれの初来日、地元ライヴ・ハウスで観たパット・メセニーあたりが5本指)。その時の映像ということで、次に出た『PULSE(驚異)』やギルモアの映像作品群よりも衝撃が強く、はるかに思い入れが大きいのだ。それがようやくレストア、未収だった<Money>も追加収録されたと聞き、絶対に観たいと思っていた。基本的には、どこでどうなるかよーく分かっている作品なのに、それでもやっぱり大画面で観れば感激するし、画質のクオリティも上がったことを実感する。

こちらのプレミア上映の情報は、こちらから。

レストア版は16枚組の超豪華ボックス『THE LATER YEARS』に収録されるけれど、貧乏人は5万円超のハコモノなど買えるワケないので、大人しく単体リリースを待つことに。CDと映像の抱き合わせはまだ分かるけど、DVDとBlu-Rayの抱き合わせって、ユーザーには何の意味があるのだろう…