carla bley_dinner music

フュージョンが拡大再生産ではなく、実験精神旺盛なリアル・クロスオーヴァーだった時代。その頃の面白いヤツが聴きたい、という気持ちで手にしたのが、このカーラ・ブレイの77年作。カーラ・ブレイって最近はほとんど話題に上がらないけれど、本当ならパット・メセニー級に注目されていてもよかったんじゃないの?と思う。デヴィッド・ボウイ『★(Black Star)』以降、若手のジャズ作編曲家/ビッグ・バンド・コンダクターが注目されているんだし。日本で言えば、挾間美帆とか。

アヴァンギャルドで取っ付きにくいトコロがあるカーラ・ブレイだけれど、80年代、スティーヴ・スワロー(b)とパートナーシップを結んだ頃の彼女は冴えていた。超絶おかっぱ頭のトンガリ具合は、彼女の音楽の象徴でもあった。ギル・エヴァンスもジャコも、そういうビッグ・バンド・スタイルの可能性を模索していた。ジャコはその入り口で壊れてしまったけれど…。

で、ここに取り出した『DINNER MUSIC』は、スワローとのコラボレイトを本格的に進める直前のアルバム。マイケル・マントラーと組んだカーラ・ブレイ・バンドもピークに達していて、次なるステップを探す…。そんなタイミングで、よりによってスタッフと全面共演したのだ。イメージ的にはミスマッチ感ビシバシだけど、そこに面白さがあった。

カーラは自分のバンドから、マイケル・マントラーを含む4管ホーン・セクションを引率。対してリズム・セクションは、リチャード・ティー、エリック・ゲイル、コーネル・デュプリー、ゴードン・エドワーズ、スティーヴ・ガッドの5人。すなわりクリス・パーカー以外のスタッフ全員が参集している。収録曲は当時のカーラの代表曲に新曲を追加。裏ジャケにはタイトルに引っ掛けたのだろう、オーブンでクッキング中のカーラの写真がある。似合わないと言えば似合わないけど、パブリック・イメージからの逸脱を促す企画作って、得てして面白いモノができるものだ。スタッフにしても、ガッドがこの手をやるのは不思議じゃないが、スタッフ総出で、というところがユニーク。こうしたトライアルに作品としての完成度は求めるべくもないが、カーラにとっては、次のステップに進むためのヒントを得た部分もありそうだ。

ちなみにカーラとスワローは、今もサックスのアンディ・シェパードと3人で、積極的な活動を展開している。80歳代中盤にして、今も現役。まさに魔女だな。