camel_royal albert hall

ここ何ヶ月か ずーっと書き進めていたディスクガイド『AOR Light Mellow』20周年プロジェクトの第1弾が脱稿目前ということで、気持ち的に少し余裕。他にも締切間際の仕事があるものの、風呂上がりにビールも呑んじゃったし…、というコトで、早く観たくて仕方がなかったキャメルのBlu-Ray『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』を。収録は2018年9月の『MOON MADNESS』再現ツアーのハイライト、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール公演。その少し前、同年5月のジャパン・ツアー(@クラブチッタ川崎)を観に行って、イイに気分になったのを思い出すな。

前にも何度か書いてきたけれど、叙情派プログレの代表格キャメルは、学生バンドでコピーしまくった愛着あるグループ。ところが80年代に入って次々にメンバー交替。アンディ・ラティマーのソロ・プロジェクトと化してからは、ほとんど興味を失っていた。彼のギタリストとしての魅力、曲作りの上手さが評価されてきたけれど、カナザワにはもうひとつ、流れるような変拍子を叩くアンディ・ワードのドラムも極めて重要で、2人のアンディが揃ってメロディとリズムを固めないと、自分の求めるキャメルにはならないと思ってきた。

でもそのアンディ・ラティマーが生死を彷徨う大病から帰還し、キャメルの活動を再開。そこから何かが変わった気がした。幸い00年頃から参加したドラマー:デニス・クレメントが、アンディ・ワードをリスペクトしているようで、結構細かいところを忠実に再現。基本バシャバシャ叩くパワー・ドラムなので、ワードの繊細なシンバル・ワークなど望むべくもないけれど、ただセッション・ドラマーのようにシンプルなビートを刻んだだけの歴代ドラマーと比べ、遥かに愛情の籠ったプレイを披露する。原曲をちゃんと聴いて、オリジナル・ドラマーのプレイを研究したのが分かるのだ。それに加えて、16年のジャパン・ツアーからメンバーになった盲目の天才キーボード・プレイヤー:ピート・ジョーンズが、またスゴくて。彼もまたきっとオリジナル・キャメルのファンなのだろう、オリジナルの鍵盤の音や細かいフレーズをシッカリとプレイしてくれる。しかもピートはサックスも吹くし、ヴォーカルもイケてて。この映像でジックリと彼のヴォーカルを聴いたけれど、ちょっとポール・キャラック似で、そこから少しソウルのアクを抜いた感じ。アンディ、70年代からのメンバー:コリン・ベース(b)、そしてピートと三声コーラスを披露できるようになったのも、歴代キャメルで初めてだ。ピートは自身でもプログレ系のバンドを率いていて、アルバムを出しているそうだけど、思わずそれも聴いてみたくなる、そんな活躍ぶりだ。

そうしたメンバーが入って、90年代以降のキャメルにノーを言い続けてきたカナザワも、ようやく素直に聴けるようになった昨今。チッタで名盤『MOON MADNESS』再現ライヴを観て、その復活ぶりに大いに納得したけれど、改めてこの映像を見て、思った以上に再現度の高いステージだったことを認識した。格式あるロイヤル・アルバート・ホール、ライティングも美しく、意外に記録映像作の多いキャメルにとって最高のライヴ・ドキュメントと言えるだろう。アンコールの<Lady Fantasy>には、マジ感動します。

あとは、ピート・ジョーンズ入りのニュー・アルバムを早く!