claudia campagnol

今年初めにこちらで紹介したコンテンポラリー・ジャズ系女性シンガー:クラウディア・カンパニョールが、いよいよ7月3日に、拙監修【Light Mellow Searches】@P-VINEから日本リリースされる。ひと言で表現すると、パット・メセニー・グループをバックにした女性ヴォーカル・アルバム、といえるようなハイブリッド・サウンド。しかも、僅かなゲスト陣を除いて自分で何でもプレイしてしまうマルチ・タレントなのだ。

クラウディアは1987年、ハンガリーのブタペスト生まれ。両親ともにジプシーの血筋を引く音楽家で、その後ファミリーでスウェーデンに移住。4歳でピアノを始め、両親のライヴを見ながら、ジャズやR&B、ソウル、ポップスなどを幅広く聴いて育ったらしい。特に父親のフュージョン系のレコードが好きで、チック・コリアやジョン・パティトゥッチ、メゾフォルテに夢中だったとか。そして12歳の時、ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターを聴いてからベッドに入ったところ、突然真夜中に頭の中でメロディが鳴り響き、作曲に開眼したという。音楽大学卒業後、クローディア・ダンクスとしてキャリアをスタート。09年にはゴスペル・クワイアの一員としてスティーヴィー・ワンダーと共演し、その夜スティーヴィーとの会話を思い出して一気に書いたのが、本作オープニング・チューンの<All Through You>だそうだ。

スウェーデンやヨーロッパ各地で活動し、その後デンマークのコペンハーゲンへ。そこで公私に及ぶパートナーとなるドラマー:ニクラス・カンパニョールと出会い、一度は家庭に入るも、子育てが一段落した17年に音楽活動を再開。デンマーク国内で行われる若手ジャズ・アーティストのコンペティションでファイナルに進出し、高い評価を受けて、この1stアルバム『I’M STRONG』が生まれた。最初の話題はヴィニー・カリウタ(ds)とジミー・ハスリップ(b)が参加した<Conquer The World>だが、その音は典型的なクロスオーヴァー/フュージョン・ヴォーカルには止まらず、パット・メセニー・グループやウェザー・リポート、後期イエロージャケッツ、それにディープ・フォレストやアディエマス、グレゴリアン・チャントのような、ワールド・ミュージック・エッセンスが入ったアンビエント・ミュージックの系譜を思い起こさせる。歌モノではダイアン・シューア、ラシェル・フェレル、ダイアン・リーヴス、サラ・マクラクランとか。シンガーといっても、実際はミュージシャン志向の強い、歌えるサウンド・クリエイターなのだ。それこそ、チャップリンでお馴染みのスタンダード・チューン<Smile>を、これだけ斬新にアダプトした例は、他にそうないのでは? 

基本的なサウンド・メイクは、前述ゲストと、ご主人ニクラスのドラム以外は、ほぼクラウディア自身のマルチ・レコーディング。あとは必要に応じ、空間系ギターを入れたり、サックスやフリューゲル・ホーンを追加している。他に目につくのは、超絶キューバン・パーカッション奏者のエリエル・ラゾ。元イラケレのオスカル・ヴァルデスの愛弟子で、人気ピアニスト:ミシェル・カミロのバンドで来日を重ねている。日本盤リリースにあたっては、<Dance With Me>という新曲をレコーディングし、ボーナス・トラックとして提供。これは何とも素晴らしいタレントが登場したものだ。