steve lukather 021

何かともっともらしい理由をつけては、TOTOの活動停止〜再開を繰り返してきたスティーヴ・ルカサー。往年の彼らに少なからぬ影響を受けたヒトとしては、嬉しさがある一方で、半ば勝手気ままに振る舞うルークに苦々しさも感じていた。でもファミリーのはずだったジェフ&マイク・ポーカロの遺族との裁判沙汰は相当に堪えたようで、ジョセフ・ウィリアムスと連れ立っての新生TOTOスタートに対しては、それなりに同情的。メンバーから外れたデヴィッド・ペイチもルカサー側につき、それがルークに新生TOTOのスタートを決意させた。遺族を上手く手懐けられなかった落ち度はあるけれど、彼らは故人の名誉やリスペクトだけでは暮らしていけない。マーヴィン・ゲイのケースが典型的だが、遺族が起こす盗作問題やロイヤリティの配分主張の類いは、大抵そんなモノである。

でも今回の裏騒動で、ルークもようやく踏ん切りがついたんじゃないか? 昨年11月の配信ライヴで 、新生TOTOの初ライヴを見て感激した方も少なくないだろう。もっともその中身は周年ツアーの延長で、とりわけ目新しさを打ち出したモノではなかった。今後は音的にどうなるかは別問題だけど、少なくてもルーク自身はこれまでのように、TOTOという金看板の重みをあまり意識しないで済むんじゃないか、と思う。『I FOUND THE SUN AGAIN』というタイトルも、その辺りの心情を表した、とするのは、ちょっと深読みかな?

そういうタイミングで制作された今回のソロ作。クリスマス・アルバムを含むと通算8枚目のリーダー作で、『TRANSITION』からは8〜9年ぶり。ここしばらくTOTOの周年ツアーとリンゴ・スターのオールスター・バンドに掛かりきりだったのが、こんなに間が空いた理由だろう。しかも今回は、ジョセフ・ウィリアムスのソロ・アルバムとの連作で、レーベル(メジャー配給網を持つ欧州インディーズ)もアートワークも姉妹作の様相。指名手配のようなジャケ写は、敗訴したことへの当てつけのようにも見える。でもルークもジョーも互いのアルバムに参加し、2人揃ってのスナップがそれぞれのブックレットに。彼らが新生TOTOの牽引役になることが、既に強くアピールされているワケだ。

クレジットを見ると、近年のルーク・ソロのサポート役ジェフ・バブコ(kyd)とヨルゲン・カールソン(b)、リンゴのオールスターズでも一緒のグレッグ・ビソネット(ds)、元々ルークの幼馴染みでオリジナルTOTO に参加していても不思議じゃなかった(新生TOTOに参加)ベースのジョン・ピアースがコア・メンバー。そこにデヴィッド・ペイチが加わり、ピアノとオルガンを担当する。ジョーは曲作りから参加し、バック・ヴォーカル、更にストリングスやホーンのアレンジも手掛けている。

リード・トラック<Run To Me>は、ルークとジョー、ペイチの共作によるレイド・バックしたポップ・チューン。そこにリンゴがゲスト参加し、ドラムを叩いている。なるほどそれで何処かビートルズっぽいのか…。元々ビートルズ・フリークだったジョーにとっては、まさに夢のような時間だったに違いない。

「今まで生きていて、これほど楽しいレコーディングはなかったよ。苦しむこともなく、楽しく、気楽で…。湧き上がるままにね」
このセリフの如くルークが湧き上がるままにギターを弾き倒すと、ちょっとあらぬ方向へ行ってしまうのが常だったが、この曲調からか、寄る年波か、あるいはリンゴとのツアー経験がそうさせたか、少しオトナになった抑えたルークがそこにいる。とはいえ他の楽曲は、ギタリスト:ルカサーを表現する楽曲が中心。いわゆるAORバラードやスティーリー・ダンちっくなジャジーR&Bスタイルのトラックはない。それでも初期ソロ作のように奔放に弾きまくるのとは違って、何処か程よいバランス感を保っている。そこに関しては、直近2枚のソロ作に通じるかも。

収録されたのは、<Run To Me>とインスト曲を含むオリジナル5曲に、ロック系カヴァー曲が3曲。トラフィックの<Low Spark of High Heeled Boys>、ジョー・ウォルシュ『SO WHAT』の冒頭を飾った<Welcome To The Club>、そして以前からライヴで演っていたロビン・トロワー<Bridge Of Sighs>。いずれもルークが最も多感だった70年代前半のナンバーで、彼のルーツの一端が窺えて興味深い。しかもレコーディングはスタジオ・ライヴで、クリックは使用せず。リハーサルさえロクに行わずに、1回通して演奏してスコアを確認し、テイク2で録ってしまったらしい。ギター・ソロなど必要最低限のダビングは行なったそうだが、ルークの歌入れもトラックと同日だったそうで、制作は都合は8日で完了したというからビックリだ。

コロナ禍のレコーディングながら、このライヴ感たっぷりの作品作り。しかもメンバーたちがそれを楽しんでいる様子さえ、漏れ伝わってくる。優劣とは異なるレヴェルで、宅録派には到底 成し得ない境地のアルバム。生演奏を信条とするリアル・ミュージシャンの底力が詰め込まれた、真に価値のある一作である。現状、国内盤の予定はないそうなので、早々に輸入盤のゲットをオススメしたい。