stevie nicks live

1月にポロッと出ていたらしいスティーヴィー・ニックスのライヴ盤。14年に発表されたスタジオ・アルバム『24 KARAT GOLD: SONGS FROM THE VAULT』をフィーチャーしたステージで、ワールド・ツアーは結構日が経った16年10月からの1年間。収録されたのは、17年3月に行われたUSインディアナポリスとピッツバーグの2公演となる。リリースは2CD、2CD+DVD、2Vinyl、Blu-rayの4形態にサブスクなどのデジタル・リリース。自分はジックリ悩んでBlu-rayをゲットした。最近ベテランに多い BMG Rights Management 発なので、今のところ日本発売の予定はない。

実のところ、スティーヴィーがソロ・ツアーで日本へ来る可能性は、ほぼ皆無。母体たるフリートウッド・マックでさえ人気のギャップが大きく、極東へは来ても日本はスルーされてしまう。海外でのマックはスタジアム級だからね。スティーヴィーも米国ではカリスマ的人気が高く、日本では信じられないくらいの支持があるそう。特に女性ファンに強い人気があり、このライヴも、武道館より遥かに大きいアリーナがパンパンに膨らんでいる。いつまでもフリートウッド・マックのマスコットではなく、それが証拠にマックとソロの両方で、ロックの野殿堂入り。これは女性アーティストとしては初の快挙だそうだ。

70年代から活躍しているワケで、昔のコケティッシュな魅力は妖艶さへと変化し、腰回りもタップリとしているが、特徴的な歌声に陰りはなく、ちょっとキーが下がった程度。しかもバック・バンドの顔ぶれがなかなか豪華で。バンド・マスター/ギターにワディ・ワクテル、kyd にリッキー・ピーターソン。もう一人のサウスポーのギタリストがカルロス・リオス、ドラムに元シカゴのドリュー・ヘスター、そしてコーラスの一人にマリリン・マーティン。ベースのアル・オルティス、コーラスの片割れ:シャロン・セラーニは、ワディ同様、スティーヴィーとの付き合いは古い。

そしてライヴの内容も、ファン感涙の選曲で。1st『BELLA DONNA』のリマスター版にボーナス収録されていた<Gold And Braid>で幕を開け、ソロ初期ばかり『BELLA DONNA』から3曲、2nd『STAND BACK』から4曲。80年代後半〜00年代は完全スルーし、11年作『IN YOUR D REAMS』から2曲、最新作『24 KARAT GOLD』から3曲。これにビックリのバッキンガム・ニックス時代のレパートリー<Crying In The Night>、マック時代の<Gypsy>と<Gold Dust Woman>が加わった16曲。そしてアンコールではやはりマックの<Rhiannon>と<Landslide>が歌われる。スティーヴィーは何度かお色直しがあるが、羽織っているストールやジャケットを変えているだけで、中のドレスは着替えてなさそう。マック時代のようにヒラヒラ舞っているイメージはほとんどない。逆にMCが長く、曲にまつわるストーリーを語り倒し、当時の彼氏や関係者の名前が続々出てくる。それこそ楽曲が細切れになってしまっている感もあって、日本人には字幕がない分、ちょっと辛いかも。でもCDではMC部分はカットされているようで、サラリと曲だけ聴くにはダレずに済みそう。

演奏はやはりワディのプレイが素晴らしく、スティーヴィーも全幅の信頼を寄せているのが伝わってくる。ラストで手を繋いでステージを去って行く後ろ姿など、ちょっと微笑ましくもあるな。クレジットを確認すると、プロデュースにも名を連ねている。でもその分カルロス・リオスの出番は少なめで、ソロは<Stand Back>で弾く程度。ジノ・ヴァネリのアルバムやクインシー・ジョーンズのライヴでの好演を知る身には、若干物足りなさが残る。でもリッキーのオルガンはイイ感じ。マリリン・マーティンは流石にちょっと老けたかな…。

大ベテランが新作を出したのを機にツアーを行なうと、そのセットリストを巡って、しばしば論争が起こる。その新作からの曲を期待する人と、新曲など要らないからベスト・ヒットを演れ、という人と。そういう意味で、ソロ中期の小ヒットをバッサリ斬ったスティーヴィーのセットの組み方は、ちょっと興味深かった。お歳を召して、姉御肌なトコロが出てきた一方で、まだ可愛らしさを失っていないのはサスガです。