steve gadd_blue note

スティーヴ・ガッド率いるスティーヴ・ガッド・バンド、2019年のブルーノート東京公演を収録したライヴ・アルバムが本日リリース。ガッド・バンドとしては、通算5枚目に当たる。この時のライヴはタイミングが合わず見損ねてしまったので、このリリースは個人的に嬉しい。近年のガッドは、フレンズとのソロ名義でアルバムを出したり、トリオのBlicher-Hemmer-Gaddでもコンスタントにリリースを重ねている上、チック・コリアとの双頭ユニット、桑原あいのトリオ、デヴィッド・マシューズ・トリオなど、セミ・レギュラー的なプロジェクトのリリースが多い。そんな活動の中核を成すのが、このグループと言える。

そもそもは、ジェイムス・テイラーのツアーでレギュラー化したメンバーたちが、別働隊としてスタートさせたのが、このスティーヴ・ガッド・バンド。当初のメンバーはガッドの他にウォルト・ファウラー(tr)、ラリー・ゴールディングス(kyd)、ジミー・ジョンソン(b)、マイケル・ランドウ(g)だったが、18年作『STEVE GADD BAND』から鍵盤がケヴィン・ヘイズに交代。これはラインアップの交代と同時に、鍵盤がオルガンからピアノに移ったことを示すわけで、音のヴァリエーションの広がりに繋がった。

そして今回のツアーでは、ギターがベテランのデヴィッド・スピノザにスイッチ。これはスケジュールの問題か、あるいは音楽的意図からなのかは不明ながら、音を聴く限りでは、よりスムーズになってバンド・グルーヴの一体感を増進させた気がする。ランドウの空間系ギターは良くも悪くも異次元的で、ウォルト・ファウラーのトランペットと対峙する関係にあった。ところがスピノザのプレイはもっとファンキー&ブルージーで、バンドに寄り添うスタイル。先に加入したケヴィン・ヘイズも、曲によってヴォーカルを披露したりして、どちらかというとアンサンブル重視の傾向が強い。だから感覚的には、往年のガッド・ギャングが持っていたベクトルに近づいてきた気がしている。収録曲には、スピノザのソロから<Doesn't She Know By Now>、ガッドとスピノザが揃って参加していたマイク・マイニエリ『L'Image 2.0』(08年) にスピノザが提供した<Hidden Drive>も。クルセイダーズのカヴァー<Way Back Home>は、スタッフやガッド・ギャング、ガッド&フレンズでもプレイしてきたガッド愛着の1曲だ。

近年は枯れてきたと表現されるガッドのドラミングだけれど、ラテン調の<One Point Five>で披露されるソロを聴くと、なかなかどうして、まだまだシッカリかましてくれる。総じてシンプル、音数自体は減っているが、出るべきトコロでちゃんと出てくる、そういう弁えたスタイルになったというコトだろう。

あぁ、コロナが収束して、ブルーノートで外タレを観られる日が待ち遠しいよ。