roger waters_us+them DVD

今日は1日PCに向かい合っていたので、気分転換にコレ。一昨年暮れのマスコミ試写会で観ることができたので、blu-rayは買うだけ買って実は観てなかった。でも今月末に、ピンク・フロイドの1990年、伝説のネブワース・コンサートのライヴ盤が出るというので、今一度観ておこうと。すると試写会時には映像のド迫力に押されてよく見えていなかった部分が、今度は手に取るように分かってきて。「遅ぇーヨ」というご指摘は、甘んじてお受けします…

今更ながら作品の概要を書いておくと、ロジャー・ウォーターズの2017〜18年のワールド・ツアーからオランダ・アムステルダム4公演をシュートし、それを選りすぐって構成した映像作品で、『DARK SIDE OF THE MOON(狂気)』『WISH YOU WERE HERE(炎〜あなたがここにいてほしい)『ANIMALS』『THE WALL』といったフロイド時代のアルバム代表曲に、ソロ最新作『IS THIS THE LIFE WE REALLY WANT?』の楽曲を数曲追加したもの。フロイド時代の作品は、どれも既に40年以上も前のシロモノだが、今もコレを超えるような重厚なライヴ・パフォーマンスは生まれていない気がする。

しかも、あの本家ピンク・フロイドを凌駕するようなステージングが圧巻で。両者を比較すると、演奏面ではデイヴ・ギルモアがいる分、アドリブ・パートが用意されたりして、本家フロイドの方に分があるように思える。ロジャーが若手にリード・ヴォーカルを振っている曲があるのも、大きなマイナス点だ。ただしドラムに関しては、ロジャー組が優勢。若手〜中堅ミュージシャンが多いためか、ロジャー組はソロ・パートにも書き譜が多いように見受けられ、本家以上に隅々まで構築されている。でもツイン・ギターを絡ませたり、<虚空のスキャット>では女性コーラスをハモらせたりと、所々でオリジナルとは違ったアレンジを披露するので、そこはなかなか新鮮。

しかし何より痛切に感じたのは、共に圧巻のライヴ・パフォーマンスを見せつけながら、その成り立ちが異なっている点だ。やはり本家フロイドはピュアに音楽を再現しているのに対し、ロジャーの方は現在も有効な社会的かつ政治的メッセージを今様に再構築して、かなり攻撃的に発信している。だからここでのロジャーは、ミュージシャンというより表現者であり煽動者。その歌もストレートで熱い。拳を握り、中指を突き立て、オーディエンスを指差して問いかける。<Another Brick In The Wall>で子供たちが登場する演出や、巨大な立体スクリーンに映し出されるトランプをコケにした<Pigs>の映像など、その多くが楽曲のメッセージに連動。だから本家フロイド以上に強いインパクトがある。

リック・ライト亡き今、デイヴ・ギルモアがフロイド再結成に否定的なのは、どんなに工夫してこの時期の楽曲をプレイしても、決してロジャー以上のパフォーマンスはできないのが分かっているからだろう。ニック・メイソンが初期楽曲に限定したプロジェクトを推進しているのも、それを裏付けている。

やっぱりロジャーとギルモアが別々に動いているのは、不幸なコトだな。