t groove works 2

最近いろいろと仲良くしているディスコ・クリエイター: T-Groove こと高橋佑貴のワークス集第2弾『DOUBLE PLATINUM』が出ている。“世界を股にかけて活躍する”という枕詞通り、デビューはフランスのDiggy Downからだったが、あれよあれよと知名度と評価を爆上げ。日本ではケミストリーやケイコ・リー、そして今井優子などのメジャー仕事を増やし、ディスコ系カタログの再発監修やコンピレーション選曲も多い。対して海外ワークスは、自ずとダンス系インディ・レーベルでのリリースに絡み、7インチ・シングルや、誰かのアルバムで1〜2曲リミックス/アレンジを担当するパターンが多々。そのタマ数がハンパなく、しかも国内リリースどころか限られた枚数しか輸入されないアイテムが多くて、まるで追随できない。そうしたワークスを集大成した ありがたく便利な一枚が、この『DOUBLE PLATINUM』である。

収録ソングリストは以下の通り。初CD化トラック多数収録。

☆ Saucy Lady / I'm Ready (T-Groove Remix)
☆ The Doggett Brothers feat. Kenny Thomas / You Make Me Feel
                       (T-Groove Extended Remix)
☆ Rene Rose / Funky Attitude (T-Groove Remix)
☆ Jerem A feat. Desi / Diamond Life (T-Groove Remix)
☆ B.Thompson / Anything
☆ Tortured Soul / I Don't Need Your Love Tonight (monolog & T-Groove Remix)
☆ Chairman Of The Board feat. Ken Knox / I'm Ready Willing And Able
                            (T-Groove Remix)
☆ Ryle feat Kiki Kyte & Folami / Soho House (T-Groove Remix)
☆ Cool Million feat. Glenn Jones / Tonight (T-Groove Remix)
☆ Stone Paxton / I Don't Think She's Gone (T-Groove Remix)
☆ Tom Glide & Terisa Griffin / Magic Spell On Me (T-Groove Remix)
☆ D Train / Living It Up For The Week End (T-Groove Remix)
☆ Two Jazz Project feat. Enois Scroggins / Bring Back The Faith (T-Groove Remix)
☆ Melissa Sanley / My Time (T-Groove Remix)
☆ Yuma Hara with T-Groove & Hanah Spring / Brazilian Rhyme (T-Groove Remix)

現行ディスコ〜ダンス・シーンに詳しくないと「?」なアーティストもいるけれど、タキシードと並ぶ人気ユニット:クール・ミリオンとコラボしていたり、グレン・ジョーンズやD.トレイン、チェアマン・オン・ザ・ボードなど、往年のR&B〜ソウル・アクトとタイアップしていることに驚く人も多いのでは? ココには未収録だけれど、元ナイトフライトのハワード・ジョンソンの最新シングルにも参加している。

またJerem A feat. Desi による<Diamond Life>は、ルイ・ヴェガのハウス・クラシックのカヴァー。故ロジャー・トラウトマンの血縁:B.Thompsonの<Anything>は、リミックスではなく本盤唯一のオリジナル。B.ThompsonはT-Groove作品の常連シンガーでもある。Ryle feat Kiki Kyte & Folamiは、クール・ミリオンの片割れ:フランク・ライルのリーダー・ユニットで、Folamiは現行シックのフロント・シンガー。Stone Paxtonは故リック・ジェイムスのストーン・シティ・バンドに在籍した鍵盤奏者。<My Time>の Melissa Sanleyも現行シンックの取り巻きで、プロデュースも現シックのベース・プレイヤー:ジェリー・バーンズ(元ジューシー)だから、いずれナイル・ロジャースとT-Grooveのコラボが実現、なんて可能性も

そしてラストを占めるのは、5月に我が【Light Mellow Searches】@P-VINE から2枚目のソロ・アルバムをリリースするギタリスト/マルチ・サウンド・クリエイター:Yuma Haraとの<Brazilian Rhyme>。7インチはアッという間にソールド・アウトしてしまったが、ここに別ミックスが、そして ゆうまソロにも別ヴァージョンが入る、まさに注目のトラックと言える。

こうしてディスコまみれの15曲をぶっ通して聴いてみても、全然モタれないのが T-Grooveワークスの特徴だ。解説中でライター仲間の林 剛氏が、 T-Grooveミックスには オリジナルにも勝る “原曲感” がある、という旨を指摘しているけれど、それがまさに言い得て妙。だいたい、ディスコ系リミックスというと、とって付けたような盛りモリのリミックスが定番で、正直、あまり音楽的とは言えない。でもそれは、フロアで踊るために制作されているのだから、当然のこと。ミラー・ボールがグルグル、フラッシュがビシバシ、そういう中で映える音圧高めのドンシャリ・サウンドが好まれるワケだ。

ところが T-Grooveミックスは、フロア・ユースとリスニング需要のバランスをとっているようで、より音楽的な仕上がり。ビートを強調してもヴォーカルの邪魔はせず、音と音の空間に余裕を持たせて、どんな場面にも耳馴染みが良い音触を創出する。当人のキャラを知ってるだけに、あまり使いたくないが、音作りに “気品” があるのだな

それに加えて、彼自身のフットワークが天下一品。これが海外にネットワークを広げている秘訣でもあって。自分自身が海外へ行くことはほとんどないクセに、アッという間にヒトと繋がる。そしてその根底に、みんなで楽しいコトをやろうよ、というシンプル且つピュアな想いと音楽への弛みなき愛情がある。こういう輩、今までいそうでいなかったから、ドンドン新しい仕事が入っているのだろう。そこはホント、尊敬に値するな

日本のトム・モウルトン、なのかどうかは知らないけれど、現行ダンス・ミュージック・シーンに於いて、T-Grooveが世界的なリミックス・ブランドを確立したことは間違いない。