steve cropper

白人ながらソウル・ギターのレジェンドとして名人芸を披露してくれるスティーヴ・クロッパー、御ん歳80(今年10月で)のニュー・アルバム。ブッカー・T& The MG's で活躍し、オーティス・レディング<The Dock Of The Bay>やウィルソン・ピケット<In the Midnight Hour>といったソウル・クラシックの数々を書いたことでも知られている。また映画『ブルース・ブラザーズ』でも存在感を発揮。ロックやAOR寄りのところでは、ネッド・ドヒニーやタワー・オブ・パワー、ケイト・ブラザーズ、ポコ、ジョン・クーガー・メレンキャンプ、イヴォンヌ・エリマンらをプロデュース。それにスタッフやロベン・フォード、忘れちゃイケない、第2期ジェフ・ベック・グループもクロッパーの制作だった。

ソロ名義の作品としては、『DEDICATED (A Salute To The 5 Royales)』以来、10年ぶり。でもあれは、B.B.キングやベティ・ラヴェット、ダン・ペン、スティーヴ・ウィンウィッド、ブライアン・メイ、ルシンダ・ウィリアムス、ケブ・モーら超豪華ゲストを迎えて、黒人ヴォーカル・グループの草分けであるThe 5 Royales の楽曲をカヴァーする企画モノ。だからその前となると、フェリックス・キャヴァリエと濃厚コラボイレイトした08年作『NUDGE IT UP A NOTEC』、その続編となる10年作『MIDNIGHT FLYER』以来、になる。

実際このアルバムには、キャヴァリエが2曲、作曲とオルガンで参加していて。情報によると、元々この2曲は、共演アルバムを制作した時のアウトテイクだったとか。その時2人と共同プロデュースに当たっていたジョン・タイヴンが、その音源をキープ。今回のコロナ・パンデミックに見舞われる中、タイヴンが「その時の音源を生かして何かできないか?」と、クロッパーに持ちかけたのが出発点になった。

クロッパー以下のサポート・メンバーは、そのジョン・タイヴンがベース、キーボード、サックス、ハーモニカなどをマルチに担当。ドラムにナイオシ・ジャクソン。そしてオーセンティックなR&Bシンギングを聴かせるロジャー・C・リール、が基本フォーマット。キャヴァリエ以外では、ドラムでアントン・フィグ、ミッキー・カーリー、オマー・ハキム、チェスター・トンプソン、サイモン・カークらの名前もある。タイヴンがマルチ・プレイしていることで分かる通り、レコーディングはリモート中心。インタビューでクロッパーは、「ヴォーカルはiPhoneで録った」とか言ってて、マジかと思ったけど、だとしたら猥雑感や熱気を演出するために、敢えてこの手法を取ったのではないか。

作曲はクロッパーとタイヴンが中心。サイモン・カークの名前にオオッと反応していたら、<She's So Fine>はポール・ロジャースとクロッパー、タイヴンの共作曲だった。それにロジャースはブックレットにコメントを寄せていて、「オレがスティーヴ・クロッパのプレイを初めて聴いたのは、 14歳の時。オーティス・レディングの『OTIS BLUE』が最初だった。あのアルバムがオレの人生を変え、音楽の旅が始まったのさ」と書いている。

言うまでもなく、音的には目新しさなど皆無。でもストーンズが『BLEU AND LONESOME』で今様ルーツ回帰を見せたように、クロッパーもココで、ノスタルジーとは無縁のポジティヴでオフェンシヴな先祖帰りを見せる。痛快丸カジリ、とはこのコトだ。