ivan lins_juntos

ユニバーサル・ミュージックの廉価盤シリーズ【初CD化&入手困難盤復活!! 〜ブラジルが生んだ秘蔵の名盤〈'50s~'00s〉】からのピックアップで、イヴァン・リンスが84年に発表した『JUNTOS』を。クインシー・ジョーンズが自分のアルバム『THE DUDE(愛のコリーダ)』や、プロデュースしたジョージ・ベンソン『GIVE ME THE NIGHT』、パティ・オースティン『EVERY HOME SHOULD HAVE ONE(ディライトの香り)』にイヴァンの曲を取り上げたのが、彼を名をインプットした最初で。

しかし当時の日本では、イヴァンの作品は出ておらず…。そんなところにデイヴ・グルーシンとリー・リトナーがイヴァンをフィーチャーした『HARLEQUIN』を発表し、ほぼ同時にこの『JUNTOS』がイヴァンの日本デビュー盤として初登場…と、そんな流れではなかったか。とにかくイヴァン・リンスに対する注目度が最高潮に高まったタイミングで、このアルバムで初めて当人の作品を聴いた、そんな人が多かったと思う。

ジャケットには、イヴァンを挟むように、アレンジャーのジルソン・ペランゼッタ、曲作りのパートナーでもある作詞のヴィトル・マルチンスの名が。これはイヴァンとヴィトルが最初の共作<Abre Alas>を書いて10周年という記念碑的作品だそうで、3人が最も濃密な時間を過ごした77〜80年のEMI Odeon時代4作、『今宵楽しく(Somos Todos Iguais Nesta Noite)』『ノス・ヂアス・ヂ・オージェ(Nos Dias De Hoje)』『ある夜(A Noite)』『ノーヴォ・テンポ(Novo Tempo )』からのセルフ・カヴァーを中心に構成。収録曲にそれぞれゲストを迎えるという豪華な作りになっている。エラズモ・カルロスを迎えた<Dinorah, Dinorah>はベンソンでお馴染み。<Comecar De Novo>はパティ・オースティンが英詞で歌っていた<The Island>。そのパティは、81年作のアルバム・タイトル曲<Daquilo Que Eu Sei>を、イヴァンとデュエットしている。一方本作のタイトル曲は、唯一このアルバム用に書かれたインスト新曲で、ベンソンが華麗なギターを披露。

他にジャヴァン、チン・マイア、シモーネ、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ、ベッチ・カルヴァーリョ等など。そして最後はイヴァンの曲を歌って、彼にデビューのキッカケを与えたエリス・レジーナが歌う<Qualquer Dia (Vinheta)>を彼女のアルバムから。

如何にも80年代っぽいサウンドで、チープな打ち込みや小煩いシンドラム、妙に薄っぺらな鍵盤類が鳴っていたりするものの、やはり普遍的メロディとヴォーカルを活かす抑えたアレンジが功を奏しているのか、同時期のR&B系作品ほど煩わしくはない。最初から南米以外でのリリースを意識していたのだろう、イヴァンのキャリアを駆け足で紹介するような、ベスト盤的趣きがある。89年にはUS録音で完全にワールドワイド向けに作った『LOVE DANCE』を出すイヴァンだけれど、ブラジルらしさが濃いめに残したままで間口を広げた『JUNTOS』で彼の音楽を知ることができたのは、結構ラッキーだったかも。

いただけないのは、37年前の発売時のマスターをそのまま使って売るコトだけだな…