pfm_2021

今日は各方面のライヴ・イベントからインヴィテーションを頂戴していたが、諸般の事情ですべて断念。先ほどから、1ヶ月前にリリースされてメチャ良かったPFMのニュー・アルバム『I DREAMED OF ELECTRIC SHEEP(電気羊の夢を見た)』を、改めて聴き直している。ご存じですか? PFM= Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)。70年代初頭から活動しているイタリアの老舗プログレ・バンド。前身時代を含めると、既に55年のキャリアを誇る長寿バンドで、PFMになってから50年、一度も解散していない稀有な連中なのだ。

日本で知られるようになったのは、ELPのレーベル:マンティコアから世界デビュー盤『PHOTOS OF GHOSTS(幻の映像)』(73年 / 通算3作目)を出して。カナザワも次作『THE WORLD BECOME THE WORLD(蘇る世界)』とかライヴ盤『COOK』とか、中高生時代にハマったなぁ…。その後ジャパン・ツアーなども敢行して活躍したが、80'sの風はプログレ・バンドには厳しく、彼らも御多分に洩れず徐々にポップ化。ニュースはほとんど届かなくなっていった。それでもイタリア国内では断続的に活動していたらしく、90年代終盤にプログレ回帰。この新作は、17年作『EMOTIONAL TATTOOS』以来4年ぶりのアルバムになる。でもコレは、ホントに良くてビックリしたんだワ。

内容的には、映画『ブレードランナー』、そしてその原作であるSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』にインスパイアされた作品だとか。CDは前作同様、英語盤とイタリア語盤の2枚組になっている。そう聞くと、ちょっとヘヴィな作品ではないかと勘違いしてしまいそう。だが実際は、重厚ながらも耳馴染みが良くて、思慮深さとムード・プログレ的ライト感覚を併せ持っている。時にイエス、時にジェネシスみたいなサウンドにもブチ当るが、それが全然ムリのない展開で繰り出されていて、まるで英欧プログレの集大成のよう。それでいて古臭さやノスタルジアはなく、温故知新とでもいうべき、新しいプログレ・スタイルを示しているように感じる。

ずーっと活動を続けているとはいえ、70年代全盛期のメンバーは既に少なく、正式メンバーはオリジナル・ラインアップのフランツ・ディ・チョッチョ(ds.vo)と74年に加入したパトリック・シヴァス(b,kyd)のみ。それを元メンバーや、2010年代からのツアー・メンバー連合軍で制作に臨んでいる。加えて今作には、イアン・アンダーソンやスティーヴ・ハケットがスペシャル・ゲストとして参加。PFMの盛り上げに加担している。ジャケットの合成写真も、フランツとパトリックの顔の左右を繋いだものだ。

キング・クリムゾンが来日し、ジェネシスもツアーを再開、ピンク・フロイドも旧作をアップデイトと、それぞれが厳しい状況を克服して前向きに動き続けている。でも本当のオリジナル新作を出すことができているのは、イエスくらい。でもそれらがモノの見事に霞んでしまうような、そういう作品力の高さが、このPFMのニュー・アルバム『電気羊の夢を見た』には存在している。

ひょっとしたら、ゼロ年代以降のメジャー・プログレ・シーン最高傑作になるかもヨ。