geyster_1980

フランス人マルチ・ポップ・クリエイター:ガエル・ベンヤミンの・ユニット、ガイスターのニュー・アルバム『RADIO GEYSTER 1980』。既にデジタル・リリースになっているが、拙解説付きの輸入盤国内仕様のブツが届いた。一般発売は今月27日なので、まだチョイと間があるが、サブスクなどでもう聴くことができるのでイイでしょう。ガイスター名義では、20年目の15作目。日本では、やはり輸入盤国内仕様で流通した2020年のライヴ・アルバム『LIVE HERE LIVE NOW』以来となるが、実はその後にアンビエント・テクノ風の『EUPHORIA』、弾き語りベースのミニマムな『ESCAPE IN THE NIGHT』を発表。つまり約2年で計4作を送り出すという、コロナ禍なんて何処吹く風の多作振りと振幅の大きさは、まったく相変わらずである。

でもそこで一転、お馴染みのガイスターが帰還。ラジオ・ショウ・スタイルで制作された『RADIO GEYSTER 1980』が登場し、これなら再び日本でも、と。ガエルがこの手のアルバムを作るのは、今回で3回目。前回は2011年の『RADIO GESTER 1977』で、エレクトリック・ポップス色濃厚なガエルが、70年代末を意識したローファイ・ビートを鳴らしていた。

架空のFMステイション:ラジオ・ガイスターは、L.A.はサンセット・ブールヴァードにある設定。そこで約1時間の人気ミュージック・プログラムのDJ役が、ファンお馴染みのドクター・ジャムである。ジングルとともに始まり、レーガン大統領就任やジョン・レノン暗殺、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム急死、なんて当時の時事ネタのナレーションも。やっぱりガエルは芸が細かい。

テーマが1980年なのは、“音楽界も社会も時代の変わり目だった”というガエルの視点から。それに相応しく、ドラム・マシーンがチャカポコと安っぽいビートを刻んだり、薄いシンセがヒョロロ〜と鳴っていたりする。でもそれを古臭く感じないのは、昨今のシティ・ポップ・ブームと感覚が繋がっているからかしらね? 映画『HELLOWEEN』(79年)のテーマをカヴァーした以外は、ヒット曲のサンプリングや直接的オマージュなどもなく…。とはいえいつも通りガイスターよりは 若干ノスタルジックに寄せていて、アラン・パーソンズや10ccあたりを髣髴させる。ボッサな<A New Kind Of Hero>やアコースティックな<Night Flight To L.A.>は、美しく繊細。仮想カリフォルニアでも、ウェットなところはやはりフランス産だなぁ。