state cows_ high & dry


AORのメッカである米国の新プロジェクト:ペイジ99にも大きな影響を与えた
北欧のAORユニット、ステイト・カウズ。
いつになく短いインターバルでリリースされた待望の4作目は、
同じ北欧勢だけでなく、本場ミュージシャンにもインスピレーションを与える
濃密パフォーマンスが刻まれている。
モア・ポップ、モア・ソリッドなシュア・ショットをご堪能あれ。


スウェーデン発の北欧AORトップ・ランナー、ステイト・カウズの2年ぶり4作目『HIGH AND DRY』の日本リリースが、カナザワ監修【Light Mellow Searches】from P-VINE で間もなく。緻密なAORサウンドでフリークの間で大きな話題になったUSデトロイトのユニット:ペイジ99のジョン・ニクソンが、「ステイト・カウズに感化されて、この手のサウンドにまだ可能性があることを発見した」と語っているが、それを知ったステイト・カウズ側も、「自分たちが、他の人が音楽を作るキッカケになったなんて、とても感動的なこと」と反応。ジョンとその弟トム・ニクソン(オーガスト・レッド)とは既に交流を持ち、兄弟が持つポッドキャスト・プログラムにも出演したそうだ。

従来は顔を突き合わせて曲を作っていたステイト・カウズのダニエル・アンダーソン(vo,g)とステファン・オロフソン(kyd, g,b,ds)。だが前作『CHALLENGES』制作前に、ステファンがギリシャへ移住。クリエイティヴ・ワークの進め方に抜本的変化が出た。それを克服して3作目を出したら、今度はコロナ・パンデミック。スタジオでの生ドラムの録音に待ったが掛かったものの、いざ取り掛かると、以前よりスピーディーにコトが進んだらしい。

「ワーク・フローを実現する方法を見つけ出すのに、ちょっと時間が掛かった。正直なところ、ロックダウン前と同じように分散型でレコーディングやプロデュースができるレヴェルに達したのは、<Emily>をシングルでリリースした頃(2022年2月)なんだ」(ダニエル)

でもアルバムを聴いてみれば、以前にも増してポップ色が濃厚。意識的に狙ったワケじゃないが、結果的にそうなったと言う。でもそこには、その理由と思えるストーリーも。聞けばこの『HIGH AND DRY』は、元々アルバムを作ろうとして取り組んだワケではなかったとか。思いつくまま曲を作り、シングルとしてデジタル・リリースを重ねる。それが溜まってきたのでアルバムにまとめたという、ちょっとしたシングル集みたいな成り立ちなのだ。

マイケル・マクドナルド・マナーのピアノ・リフにホール&オーツ風ハーモニーが乗る、キャッチーな<If We Could Be Together>。ダニエルは「ビートルズっぽい」というが、自分的にはむしろELOや10cc、パイロットあたりのカラーを感じる<Caught in a Landslide>。スティーヴィー・ワンダーの影響を受けて書いたという<Hold On>。<Turnaround>は、本作で最もスティーリー・ダン・テイストを漂わせるトラック。<Two Kindred Spirits>はイマジネイティヴなミドル・セクションを持つ。<When You Smile>も、ジェフ・リンっぽい英国ポップ風のシャッフル・ナンバー。そして本編ラストは、ステファンが以前ソロ・シングルとしてリリースしていた<Blues to the Beat of Your Heart>で、ちょっぴり内省的にアルバムを締める。日本盤では更に、ルーファス&チャカ・カーンのカヴァー<Ain’t Nobody>がボーナス・トラックとして。

これまでのアルバムと違い、名の通った著名ゲストはいない。おそらくそれはシングル曲を集成したアルバムだからで、彼らの楽曲自体には、もう他の誰かのヘルプは不要というコトを物語っている。そんな確かな成長を感じさせる4作目なのだ。